2004年12月22日(水)「しんぶん赤旗」
来年の通常国会へ法案が提出される介護保険見直しで、日本共産党は、大改悪を許さず、より良い介護制度にするための提案(十一月十八日発表)を医療・福祉団体などに届け、懇談しています。党国会議員団は二十一日までに十八団体を訪問。自民党の支持基盤にある関係者とも率直に意見を交わし、政府の見直し案への批判の声も広く寄せられています。
1、介護サービス切り捨て、負担増の大改悪を許さない |
「(政府は)財政のすり合わせの話ばかりやっている。患者さんからホテルコストをとるとか負担をかける話ばかりだ」(七日、日本医師会・野中博常任理事)
五年に一度、制度が見直される介護保険。今回は、利用が伸びすぎてこのままでは政府の支出も増えるから“サービス提供を効率化・重点化する”というのが小泉内閣の方針です。その具体策の一つが「ホテルコスト」(居住費・水光熱費、食費など)の徴収です。介護や医療の施設に入所している高齢者を対象にした負担増で、日本医師会も反対しています。
厚生労働省の試算では、特別養護老人ホームの相部屋(重度)で月額三万一千円増となり、利用者負担は八万七千円に引き上げられます。
日本共産党の提案は、「月六万六千円の国民年金の満額受給者でも入所は困難になってしまいます」と、負担増を許さない行動をよびかけています。日本医師会を訪ねた小池晃党政策委員長は「国の負担を減らすため利用者に痛みを押し付けるもの」とのべ、協力を求めました。
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「国の財政責任は公費の部分の二分の一(給付全体の25%)という説明でスタートしたのに、調整交付金があるため25%こない。約束が違う」(七日、全国市長会・猪塚光明社会文教部長)
国庫負担引き上げは、介護保険を運営している市町村の切実な要求です。介護保険の給付費用は、半分を保険料、残り半分を公費で負担します。公費は国と地方の折半として国は25%負担とされています。
地方が問題にしているのは、このうちの5%が「調整交付金」とされ、所得水準が平均より高く、高齢化が比較的ゆるやかな都市部は5%より少ない配分となり、高い保険料をさらに押し上げる仕組みとなっていることです。この調整のための5%分は別枠で国が負担し、25%の国庫負担をすべての地方に保障することが市長会の要求なのです。
党の提案も、5%分を上乗せして国庫負担全体を「ただちに30%に引き上げること」を提唱しています。引き上げに必要な財源は年間三千億円程度。引き上げによって「国の制度として、住民税非課税世帯を対象に、在宅サービスの利用料(原則10%負担)を3%に軽減し、保険料を減免することが可能」(党提案)になります。
「要介護1と認定された人を介護サービスから外すことに反対だ」(九日、全国老人福祉施設協議会・福間勉事務局長)
「要介護1」とは、介護の必要度が低いランクです。厚生労働省は、一番低い「要支援」とともに、軽度の高齢者向けの在宅サービスを制限する方針です。筋肉トレーニングなど新しい予防給付サービスを導入し、長期的な給付費抑制につなげるのが目的です。
介護の現場では、家事援助など軽度の介護サービスの利用者が保険から締めだされるという不安が広がっています。厚生労働省は、軽度サービスを新予防給付サービスに残したとしても介護報酬(サービス価格)を大幅に引き下げる考えで、事業経営への打撃を心配する声も広がっています。
党提案は、軽度の高齢者の介護サービスを制限することは「『介護予防』に逆行する」と批判。「介護予防」をすすめるための介護・医療・福祉・公衆衛生の連携したとりくみが重要と提起しています。三十二万人の待機者をだしている特別養護老人ホームの計画的整備とともに、「在宅でも施設でも、安心して暮らせる基盤整備」を国の責任ですすめるよう求めています。
「介護職員は常勤が少なく非常勤が多い。自分たちが安心して働くことができなければ、良いケアはできない」(十日、日本歯科医師会・石井みどり常務理事)
介護サービスの利用計画(ケアプラン)をつくるケアマネジャーの労働条件の改善と力量向上は、今回の見直しの中心テーマの一つになっています。一人のケアマネジャーが担当すべきサービス利用者を五十件とする現行基準は多すぎると問題になり、厚労省は基準引き下げとケアプラン作成の報酬引き上げを検討しています。
党の提案も、ケアプラン作成に専念できる条件整備という視点から「担当件数の削減、介護報酬の引き上げ」を見直しにもりこむよう求めています。ヘルパーの劣悪な労働条件も「根本的な原因は介護報酬の低さにある」として、改善を要求。「専門職にふさわしく介護労働者の身分と待遇を改善することは、安心できる介護制度の大前提」と強調しています。