2004年12月22日(水)「しんぶん赤旗」
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財務省が二十日発表した来年度予算原案で、国立大授業料標準額を値上げし、批判が高まっています。この問題で石井郁子衆院議員・党国会議員団文部科学部会長に聞きました。
――国立大授業料標準額は五十三万五千八百円とされ、一万五千円の値上げです。
これはとんでもないことです。多くの人に大学や大学院への進学を経済的理由から断念させる大変な問題です。
私も直ちに小林美恵子参院議員とともに、政府に対して国立大授業料標準額値上げの撤回と高等教育予算の増額を求める申し入れをしました。
もう国民の学費負担は限界を超えているんです。「子どもが大学に行きたいといいますが、多額の借金を背負うのは怖いのであきらめさせるしかありません」。こうした切実な声が私たちにもたくさん寄せられています。
この三十年余の間に、国立大の初年度納付金(授業料、入学金など)は五十倍の約八十万円に、私立大は五倍の約百三十万円に高騰しました。二人の大学生をもつ家庭では、学費や仕送りで親の年収の大半がなくなるといいます。
値上げを推進してきた文科省の中央教育審議会でさえ、これ以上家計に負担をかければ「高等教育を受ける機会を断念する場合が生じ、実質的に学習機会が保障されない恐れがある」(〇四年十二月)と認めざるをえない事態です。
憲法第二六条が保障する「ひとしく教育をうける権利」が奪われているのです。
――世界的に見るとどうなんでしょうか。
日本の学費は“世界一高い”といわれています。欧米の大学はほとんどが公立で学費は無償か安価です。奨学金も返還義務のない「給付制」が主流です。高等教育を国づくりの基本に位置づけて支援しているのです。日本では、高等教育予算がGDP(国内総生産)比で0・5%であり、欧米諸国の半分の水準にすぎません。学生は教育で利益をうけるから学費負担は当然とする“受益者負担”の立場から、国の高等教育への財政責任を弱めてきたからです。
国立大学の授業料は、今年四月からの法人化によって、国が定める標準額の10%増を上限に各大学が決めることになりました。その際も、値上げを戒めるために「経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう、将来にわたって適正な金額、水準を維持する」という付帯決議を国会であげたのです。ところが、政府は、法人化前に国立大学の授業料を隔年で上げてきたことを理由に、標準額そのものを引き上げるというのです。標準額がどんどん上がれば、それにあわせて授業料を上げないと各大学の財源が減るしくみになっていますから、値上げする大学が続出する可能性は濃厚です。
来年度予算原案で、「学生数が減少している」ことを理由に、私立大への国庫助成を六十五億円減らしたことも重大です。この二十年間なかったことです。多くの私立大学が受験者数の減少によって経営が難しくなっているだけに、むしろ、国の支援を強めるべきなのです。逆に助成を減らせば、私学がつぶれていくか、学費値上げをひきおこすことになりかねません。
――大学関係者からは強い反対の声があがっていますね。
国立大学の学長でつくる国立大学協会は授業料の値上げは「容認できない」という要望書を、八日、政府に提出しました。中四国の国立十大学の学長は、十六日に連名で声明を発表し、「地域における『知のサイクル』が壊れ、地方と中央との格差はますます拡大し、地域の発展は期待しがたい」として、値上げに強く反対しています。学生の間では、全日本学生自治会総連合(全学連)の「学費値上げストップ、大学予算増額」を求める請願署名に大きな反響が集まっています。政府は、これらの声に真剣に耳を傾けるべきです。