日本共産党

2004年12月23日(木)「しんぶん赤旗」

オランダ 年金改悪にストップ

労働者が30万人集会

「生涯休暇制度」を大幅拡充


 オランダでことし十月、労働組合が政府の年金改悪計画などに抗議して三十万人という戦後二番目に大きなデモ・集会・交通ストライキを展開しました。紛争は十一月初め、政府側が譲歩、対話へ復帰する形で収拾されました。政労使三者が対等の立場で合意を目指すルール「ポルダーモデル」が根付いていた同国で起きた突然の労働紛争に、その推移が注目を集めました。 夏目雅至記者

 公的年金の支給開始が六十五歳のオランダでは、平均的な退職年齢は欧州平均を下回り、男性は五十九歳、女性は五十五歳です。これは、早期退職年金制度や障害保障制度、失業保障制度など手厚い社会保障制度によるものです。

 保守連立のバルケネンデ政権は、二〇四〇年には六十五歳以上の人口が今の二倍になり現行の社会保障制度の維持が困難になると主張。政労使交渉の場で、早期退職年金制度への税優遇措置の撤廃、障害保障や失業保障の受給資格制限などを提案しました。

交渉が決裂

 協議は、昨年十一月から続いていましたが、政府が一方的に今年五月の交渉期限を設定。このため五月中旬に交渉は決裂し、オランダ労組連盟(FNV)、キリスト教労組連盟(CNV)、管理専門職労組連盟(MHP)の三労組は、政労使で合意されていた賃金凍結の無効を宣言、政府との全面対決の構えをとりました。

 三労組のセンターが呼びかけた十月二日のアムステルダムの「博物館広場」での集会には約三十万人が集結、一九八〇年代の中距離ミサイル配備反対集会以来の規模での集会、デモになりました。これに続いて労組側は同月十四日、鉄道やバスなどの公共交通部門で約二万人が参加するストライキを行い、同国の交通機関は完全にまひ。同月二十七日は、金属機械産業で二万二千人(二百社)でスト。十一月には建設産業、教育・医療部門、公共サービスなどでストが計画され、同月二十九日には全国ゼネラルストライキも予定されました。労組側はまた、早期退職制度を守るための国民投票を要求する運動を始めました。

 十一月六日未明に成った合意は、労組のこれらのたたかいを背景に達成されたものでした。労組側はこの合意を三十万人集会が開かれた地名にちなんで「博物館広場合意」と名づけています。

 合意は、早期退職制度への財政援助措置撤廃などは政府案通りとなりましたが、その代替措置として、勤務年限に応じた休暇制度「生涯休暇制度」を大幅に拡充、これを利用することで早期退職制度が維持されることになりました。この措置で四十年間年金保険料を支払った労働者は六十歳から年金生活に入ることが可能で、早くから働き始めた人が有利となります。

行動で再評価

 また障害保障制度では、政府が提案していた労働災害による障害者への評価基準厳格化の年齢が引き下げられました。失業保障制度でも政府が狙っていた短期失業者への給付廃止などの計画が延期されました。

 政府の話し合い拒否、労組のスト、大集会という危機を克服して達成されたこの合意を、労組側は、「ポルダーモデル」が労働者の行動で再評価されたと評価しています。


 ポルダーモデル オランダでは一九八二年、長期経済不況の脱出を目的とした政府、雇用者、労組による賃金と労働時間にかんする協定(ワッセナー協定)をきっかけに、政労使三者が対等な立場で交渉、合意を目指す方式が定着しました。オランダの象徴であるポルダー(干拓地)から名をとり「ポルダーモデル」と呼ばれています。同協定以後、パートタイムとフルタイム労働の均等待遇が確立し、ワークシェアリングや労働形態の柔軟化による失業克服や労働時間の短縮が進展。若年労働者の雇用拡大を目的にした早期退職制度も充実しました。



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