2004年12月25日(土)「しんぶん赤旗」
小泉内閣が二十四日に決めた二〇〇五年度予算政府案。増税と社会保障改悪などの負担増は、子どもから働きざかり、高齢者まで幅広い世代に及びます。小泉内閣(〇一年四月発足)がこれまでに決めた負担増(〇六年度までに約七兆円)とあわせて、来年度予算で新たに約二兆円の負担増が庶民を襲います。山川家(架空)の様子を見てみましょう。
山田英明記者
山川家をめぐる 良子(49)=専業主婦 健太(19)=大学生 美佳(15)=中学生
トメ(80)=良子の母、特別養護老人ホームに入所 浩輔(59)=大輔の兄、金属加工業経営、年間売り上げ約一千万円 (登場人物は架空です) |
大輔 給料が上がらないのに、小泉さんはなんてことをしてくれるんだ。
良子 買い物を減らさないとね。
◇
大輔の払う税額は現在、所得税と住民税あわせて年間で十六万円です。これが、定率減税の半減(所得税は〇六年一月から、住民税は〇六年六月から)とともに、十七万七千円まで増加。廃止では、十九万五千円まで膨れ上がります。
大輔 それだけじゃないよ。厚生年金保険料も年間九千円近くも上がるんだよ。
良子 そうね。毎年あがっていくんだったわね。
◇
山川家を襲うのは、来年度予算による負担増だけではありません。
小泉内閣がすでに決めた負担増の影響が来年度以降も及んできます。
山川家で見ると、年金改悪のほか、雇用保険料引き上げで年約五千円、個人住民税の配偶者特別控除の廃止で年約一万四千円の負担増などがもたらされます。
◇
良子 そういえば、大学の学費まで上がるらしいわよ。
健太 えっ何の話?
良子 新入生の学費が上がるっていう話よ。大学の授業料標準額が一万五千円も引き上げられるのよ。
健太 今五十二万八百円も払ってるんだよ。それなのにまた上がるのかよ。後輩たちも大変だな。
◇
国立大学に通う健太。来年度予算政府案は、国立大学の授業料標準額を一万五千円引き上げ、五十三万五千八百円にすることを盛り込みました。そのほか、義務教育国庫負担金を四千二百五十億円削減します。
◇
美佳 大学生も、アルバイトで大変ね。
良子 親の負担もますます重くなるわね。いまでも四苦八苦なのに。それにしても、義務教育の国庫負担金を削るなんて、教育にたいする国の責任放棄よね。
良子 そういえば、昨日、おにいさんから電話があったわ。
大輔 浩輔兄さんから電話をしてくるなんてめずらしいな。
良子 なんだか話したいことがあるみたいだったわよ。
大輔 不況が長引いて経営が厳しいらしいからな。最近も「必死で働いても厳しい」「もう、やめたい」って嘆いていたよ。
◇
大輔の兄の浩輔は、隣町で金属加工業を経営しています。昨年三月に成立した改悪消費税法によって、来年一月から年間売り上げ一千万円超の業者が消費税の課税業者になります。浩輔の工場もこれに該当します。年間の総売り上げに課税される消費税。赤字の業者でも身銭をきって消費税を納税しなければなりません。
◇
健太 ニュースで消費税の免税点のことをやっていたけど、伯父さんのところも、消費税がかかってくるんだよね。
大輔 そうみたいだな。正月に帰ったら、じっくり兄貴の話でも聞いてやるか。
良子 そういえば、来年十月からお母さんの老人ホーム代(食費・居住費)も全額自己負担になるらしいわ。
大輔 良子の実家も大変だな。
◇
良子の母・トメは現在、特別養護老人ホームに入所中です。政府は、来年十月から、介護保険の施設利用者に、居住費と食費の全額自己負担を求めることを盛り込みました。
◇
美佳 この前、トメばあちゃんに会いに行ったときも、「いろいろ迷惑かけて、すまないねえ」っていっていた。悪いのは政府なのに。また、おばあちゃんは困っちゃうね。
良子 母さんみたいなお年寄りが、「生きていて良かった」と思えない世の中なんて、貧しい世の中だよね。
健太 小泉さんって、取りやすいところからしぼり取っているっていう感じだね。
大輔 まさにそうだよ。財界のかけ声で政府と自民党や公明党などは、〇七年度からは消費税率を二ケタ(10%以上)に増税するなんて考えているしね。
◇
自民、公明両党が十二月十五日に決めた〇五年度与党税制「改正」大綱は、来年度からの定率減税の半減を盛り込むとともに、〇七年度からの消費税増税についても「税体系の抜本的改革を実現する」と盛り込みました。
◇
良子 負担が増えれば、買い物を減らしちゃうわね。そうすれば、悪い景気がまた悪くなっちゃうね。
大輔 兄貴みたいなところが経営難におちいれば、失業する人はうんと増えるよ。そうすれば、いっそう景気が悪くなるな。
来年度予算政府案に盛り込まれた介護保険の施設入所者の居住費、食費の全額自己負担による負担増額は、約三千億円(給付費ベース、平年度)。
本州四国連絡橋公団の赤字の穴埋めのために計上された四千八百二十九億円の約六割を回すだけで、負担増分をまかなえます。
不況にあえぐ中小企業対策費は、千七百三十億円と前年度からもさらに八億円削減されました。米軍への「思いやり予算」(在日米軍駐留経費)に二千三百七十八億円の約七割の予算しかありません。
|
|