2005年1月4日(火)「しんぶん赤旗」

近畿私大三団体

国庫助成の大幅な増額を求める共同アピール  

<全文>


 京滋地区私立大学学長懇談会、国庫助成に関する私立大学教授会関西連絡協議会、国庫助成をすすめる全国私立大学中央連絡会近畿ブロックの三団体は、二〇〇四年十二月に開かれた「関西私大助成シンポジウム2004」の場で、「国庫助成の大幅な増額を求める共同アピール」を発表しました。その全文はつぎのとおりです。

 今日、国内外の情勢が激動する中で、21世紀の社会発展とそれを支える人材を育成するために、高等教育が果たすべき役割はますます重要になっています。一方、規制緩和が急速に進むとともに、大学の持つ経済的な役割を一面的に強調し、国の国際競争力強化への貢献が求められています。また、学生・父母、地域社会や産業界など、大学が教育・研究活動をおこなう上でかかわる第三者への説明責任も強く求められています。

 今年度より、国立大学の法人化と大学の第三者評価制度が、実行段階に移っており、国公私立大学は新たな局面を迎える中で、各大学は社会的な役割の発揮がいっそう求められています。また、学校教育法の改正により、大学設置基準が大幅に緩和されて以降、私立大学・短期大学(以下私立大学)において、多数の新たな学部・学科の設置申請が進むとともに、さまざまな専門職大学院の開設もおこなわれています。

 一方で、1992年をピークに205万人だった18歳人口が、2009年までに120万人まで減少すると予測されている中で、私立大学の存立自体の危機も広がっています。文部科学省は、「大学全入時代」が、当初の予想より早まり2007年度に迎えることを明らかにしました。このような状況の中で、日本の高等教育全体をどのように発展させていくのかが、今まさに問われています。

 しかし、現在の高等教育予算は、文部科学省も今年度の白書で認めるように、国際的に見ても極めて低い水準にあります。予算配分においては、21世紀COEなどの競争的資金においても、国立大学が圧倒的に優位な立場にあって、私立大学は厳しい状況に置かれています。わが国の私立大学は、学生数の75%、学校数の80%を占め、高等教育における中心的な役割を担っています。ところが、私大経常費への補助率は1980年度の29・5%をピークに減少し、2002年度にはその半分以下の12・2%まで低下しています。このように、私立大学への経常費補助があまりにも低水準であるために、多くの私立大学では教育・研究条件を充実させていくことが困難になっています。また、私立大学の学費は、国立大学法人の1・7倍あまりの水準にあります。

 このように、大学運営の基盤的経費を削減・抑制する一方で、競争的予算を大幅に増額するだけでは、学生・父母の学費負担を軽減できないばかりか、学部間格差・大学間格差はますます拡大することになり、高等教育機関全体の発展をはかることはできません。わが国が文化、科学、技術の発展を通じて世界に貢献するためには、高等教育予算を欧米諸国並みの水準に引き上げるとともに、誰もが安心して充実した大学教育を受けられるように、私立大学の教育・研究条件を整備するための国庫助成を大幅に増額する必要があります。

 また、現在の厳しい状況の中でこそ、今日までの高等教育機関の発展を支えてきた「学問の自由」と「大学の自治」の意義と役割を改めて見直し、高等教育機関に携わる全ての構成員の総意で、大学創造を進める必要があります。私たち大学教職員も、学生・父母の負担軽減のために出来うる取り組みを考えるとともに、社会的な使命を深く自覚して、大学間の協同と連帯を強める必要があります。

 私たちは、本日のシンポジウムを通じて、教育・研究の充実、地域社会との連帯・協同、将来を見据えた新たな私立大学づくりを行うことで、厳しい時代を乗り越えて、社会的に広く支持される存在となるよう努力することを確認しあいました。本日の議論が、広く市民の皆さんに理解され、私立大学における教育・研究の発展と国庫助成の大幅な増額が実現することを心から求めます。



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