2005年1月6日(木)「しんぶん赤旗」

英前閣僚が小選挙区制批判

イラク戦争強行の背景に非民主的制度


 【ロンドン=西尾正哉】英国ではイラク戦争をめぐってブレア首相を批判し閣僚を辞任したクレア・ショート前国際開発相が最新の著作で、“最も切迫した英国の課題は選挙制度改革だ”と指摘し、イラク戦争強行の誤りの教訓として小選挙区制度の変更の必要性を強調しました。

 ショート氏は最新刊『名誉のための欺き?』のなかで、一九八三年に下院議員に選出されて以来の経験を基にブレア政権とその下でのニューレーバー(新労働党)路線を分析し、国民、議会を欺いて戦争を強行した非民主的な運営を批判しています。

民意をゆがめる

 同氏が特に問題視するのは、ブレア首相が党首に就任して以来、労働党の政策決定が首相周辺の一握りのグループに握られ、党内民主主義がおざなりにされてきた経過です。米ブッシュ政権を支持し国連を無視してイラク戦争を強行したこともこれが原因だと指摘しました。

 その上で同氏は、「イラク戦争と米国の進める“テロとの戦争”を支持した誤りは、英国政治の深刻な機能不全を最も重大かつ深刻に示した」とし、「中心の問題は、(国民の意思を)極端にゆがめて議席の過半数を持つ政府をつくり出す選挙制度にある」と小選挙区制度を批判しています。

 サッチャー首相当時の保守党は総選挙で実際の国民の支持(絶対得票率)が、33%(一九七九年)、31%(八三年)、32%(八七年)にすぎなかったにもかかわらず過半数を上回る議席を得たと同氏は指摘します。

地位低めた議会

 その結果、保守党政権は「不可避的にますますごう慢になり、国民の声を聞かなくなった」とし、「まったく同じことがトニー・ブレア首相の下で起こった」と強調。「議会での過半数が当然と考えられ、議会の地位は低められ、無視され、首相の権限が強化され、内閣は脇に追いやられる。首相は下院で過半数の支持を維持するのに内閣に助けを必要としないからだ」と述べました。

 そして、「ブレア首相は、ゆがめられた過半数議席と首相のポスト任命権のほかに、インフォーマルな政策決定スタイルによっても英国憲政をないがしろにしてきた」と批判しています。

 同氏は結論として、「国民世論を反映したバランスある代表制度になれば、政府は国民の支持を得るために国民の声を聞き協議することが必要になるだろう。これは議会の権限を復権させ、多くの深刻な誤りに導いた特定の人物による意思決定制度を防ぐであろう」と述べています。

 ショート氏は、労働党の左派に属し、ブレア政権誕生後の九七年に国際開発相に就任、環境や人権、女性問題、発展途上国の開発問題に取り組んできました。イラク戦争に反対した同氏は開戦後の二〇〇三年五月、イラク復興に国連が主要な役割を担うとしたブレア首相の言明が実行されていないことを直接の理由に、同相を辞任しました。



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