2005年1月10日(月)「しんぶん赤旗」
イラク、北朝鮮、暮らし、憲法
今年の政治課題にどうとりくむか
NHK「日曜討論」 志位委員長の発言(大要)
発言する志位和夫委員長(NHKテレビから)
|
日本共産党の志位和夫委員長は九日、NHK「日曜討論」に出演し、イラク、北朝鮮、二〇〇五年度予算、憲法などの問題について山本孝解説委員のインタビューに答えました。大要を紹介します。
イラク
武力弾圧と情勢悪化の悪循環が起こっている
自衛隊を撤退させ、国連中 心の枠組みづくりを
山本 イラクの自衛隊の問題で、小泉総理は派遣延長にあたり、日本にふさわしい支援を行うということは国際社会の一員として当然の責務であると強調していました。どうお考えになりますか。
志位 これは、(自衛隊派兵が)いまイラクで起こっている情勢悪化という事態に加担する結果になっていると思うんですよ。
すなわち、いま起こっている一番の問題は何かといいますと、米軍がファルージャでやったような市民に対する無差別攻撃をやる、そしておびただしい犠牲―数千人といわれる犠牲者が出ている。女性、お年寄り、子どもたちが殺されるという事態が起こり、それがイラク全土の情勢悪化をもたらしている。モスルでも今日空爆が始まったというニュースが伝えられています。つまり、武力弾圧路線と情勢悪化の悪循環が起こっているんですね。
ですから、イラクの問題で本当にまともな再建の軌道に乗せようと思ったら、米軍が武力弾圧路線を中止する。市民への攻撃を中止する。そして撤退に向けた措置をとるというのが一番大事です。日本は自衛隊を撤退させる。そして国連中心の枠組みに移すために、外交努力で責任を果たすということが一番大事な点だと思っています。
北朝鮮
「特殊機関」にメスを入れねば事態が進まない
交渉当事者を責任と権限を もった人物に
山本 北朝鮮への対応ですが、経済制裁に踏み切るべきだという声も強くなってきているのですが、経済制裁を行うことには反対ですか。
志位 私たちは、いまの新しい局面のもとで、交渉の推移と北朝鮮側の対応いかんによっては、交渉による解決を成功させるために経済制裁もとるべき手段になりうると。
山本 話し合いの解決のためにもありうると?
志位 ありうるという判断をしています。あくまでも話し合い(による解決)のための(経済制裁)ということですが。
これはなぜそういう判断をしたかといいますと、新しい局面がいま生まれていると考えているんですよ。つまり、昨年五月に日朝首脳会談をやり、金正日氏が「白紙に戻して再調査」と約束したにもかかわらず、出てきたものはああいう虚偽の骨だったという非常に深刻な、国家間の信義にもとる事態が起こっているわけですね。
しかも、「特殊機関」といわれる拉致を実行した機関がいまもなお活動していて、それが真相解明の最大の壁、障害になっている。このヤミの機関にメスを入れなかったら事態が進まないということが明らかになっている。
こういうもとで私たちは、党首会談で首相に申し入れをやりまして、北朝鮮側の交渉当事者を、本当に拉致問題の全ぼうを知り、責任と権限を持つ人物に変えなさいという(要求を北朝鮮政府にすることによって)、交渉の質の抜本的強化によって打開するという方策を提案しています。
そういう流れのなかで、経済制裁の問題も、道理ある対応を日本がやって、そしてなお前に進まない場合に、交渉による解決をはかるために、そういう手段もありうるという判断をしています。
予算案
2年間で7兆円もの大負担増路線への踏み込み
「『橋本大失政』の二の舞い になる」という批判が
山本 それから新年度予算ですね。政府は財政再建に一歩踏み出すことができたと評価していますがどう見ますか。
志位 新年度予算案が出たときに、各紙いっせいに「大増税路線への踏み込み」と書きました。今日の新聞では「上がりが怖い『増税』すごろく」だと、最後は消費税(増税)が待っているということも書きました(「東京」九日付)。
私は、二〇〇五年度と二〇〇六年度の二年間でいったい家計にどれだけの新たな負担増が押しつけられるかを計算してみたんですけれど、七兆円になるんですよ。所得税、住民税の定率減税を縮小・廃止することで三・三兆円。それに加えて介護や年金の負担増がありますから、全部合わせますと二年間で七兆円の負担増になる。
これをやりますとどうなるか。思い出すのは、一九九七年の橋本内閣がやった九兆円の負担増です。消費税や医療費の値上げなどの負担増が景気をどん底に突き落としたという問題が、いま問題になっています。「あのときの二の舞いになるんじゃないか」という声が、政府や与党の一部からも、あるいは経済界の一部からもあがっている。これは当然のことだと思います。
当時と比較してみますと、九七年当時は国民の家計がそれでも年間で数兆円規模で増えていた。いまは数兆円規模で減っているんですね。どんどん家計の所得が減っているところに、七兆円の負担増ということになりますと、経済にも暮らしにも、そして財政にも、結局は破たんを招く大失政の繰り返しになる。これは中止すべきだということを強く求めたいと思います。
憲法9条
「二度と戦争をしない」という“国際公約”
今日の世界の平和の流れの 最先端をいくもの
山本 それから憲法の問題ですね。衆参両院の憲法調査会が春には最終報告をまとめるようですけど、九条堅持をどうこれから訴えていきますか。
志位 やはり、九条というものが戦後どうやってつくられたのか、戦後六十年の今年、この原点にしっかり立った議論が必要だと思っています。
あの条文は、三百十万人の日本国民の犠牲、そして二千万人のアジア諸国民の犠牲のうえにつくられた、「二度と戦争はしない」という、いわば“国際公約”でもあり、“平和の誓い”なんですね。
そしていま九条が、世界を見ますと、例えば国連ミレニアムフォーラムが二〇〇〇年に開かれましたけれど、そこで、“世界(各国)の憲法で日本の九条のような戦争放棄の条文を取り入れようじゃないか”という報告書がつくられるぐらい、いま世界中で日本の九条に学んだ平和づくりをやろうじゃないかという流れが起こっているもとですから。
そういう(戦後の)原点にてらしても、そしていま世界の平和の大きな流れの一番先端をいっているという点にてらしても、しっかりこれを守り抜いていく。その運動を強めたいと思っています。
反転攻勢
国民の苦難と要求にこたえ、党の実力をつける
山本 最後に一言。共産党、反転攻勢の秘策はありますか。
志位 これは私たち、今年を国民のさまざまな苦難と要求にこたえた活動を、昨年は震災(被災者支援)の活動をやりましたが、おおいにそういう活動にとりくみたい。また党の実力をつけることで(情勢を)打開したいと思っています。
山本 どうもありがとうございました。
|