2005年1月22日(土)「しんぶん赤旗」 米大統領就任演説「自由」を40回以上使用干渉の正当化狙うフリーダム、リバティー。ブッシュ米大統領は二十日の第二期就任演説(約二十分)で、「自由」という言葉を四十回以上も使いました。 自由と圧制を対置させ、世界から圧制を排除し自由を拡大していくことは米国の崇高な任務だ――大統領はまるで救世主のような言い方で、米国流の「自由」体制を世界に押しつけていく重要性を訴えました。 その一方、大統領はイラクもアフガニスタンの名も挙げず、対テロ戦争という表現も使いませんでした。「戦時」の大統領にしては異例です。イラク戦争が泥沼化し、毎日米兵の死者が増え続けている現実を思い起こさせたくないと考えたのでしょうか。 イラク戦争では、もはや大量破壊兵器保有も、テロリストとのつながりも、フセイン政権打倒の理由とはならなくなりました。大義なき戦争の破たんは明らかで、米国内の世論調査では58%がイラク政策に反対と答えています。ブッシュ氏の支持率も50%そこそこ。再選された大統領としては、ベトナム戦争で不人気をかこったニクソン大統領とならんで最低レベルです。 起死回生の手として準備したイラク暫定議会選挙も、全国民の参加が不可能になり、いっそうの混乱が予想されています。イラクから撤退する国が相次ぎ、同盟国との亀裂は広がる一方。ブッシュ政権の国際的孤立は深まるばかりです。 就任演説を特徴付けた「自由」のオンパレードは、こうした窮地を打開し、破たんした戦争と孤立を正当化するためのものといえるでしょう。 「わが国の自由の存続は、他の地における自由の成功にますます依拠している」。大統領はこのようにも述べ、自由の拡大を米国を守る最良の手段と位置付けて強調しました。そして「必要なら、武力を行使してわが国と友好国を守る」と言明しました。 「世界中で専制政治を終わらせる」という言明も、イラク戦争を合理化するだけでなく、先制攻撃の戦略を含めて、必要とあれば無法な戦争をこれからも続けるという意思を示したものと受け取れます。 就任演説では名指ししなかったものの、次期国務長官への指名が確実なライス大統領補佐官は議会での証言で、キューバ、ミャンマー、北朝鮮、イラン、ベラルーシ、ジンバブエの六カ国の「体制変革」を促す方針を示しています。 「他者の自由を否定する者に自由を享受する資格はない。公正な神の統治の下、彼らの自由は長続きしない」。ブッシュ氏は演説でリンカーン大統領の言葉を引用しました。他国の人民の自決権と自由を否定し、自由の名で無法な戦争や干渉を合理化する政策に決して未来はないことを歴史は示しています。 (ワシントン=山崎伸治) |