2005年2月9日(水)「しんぶん赤旗」 介護保険どう変わる政府の「改正」案八日閣議決定の介護保険「改正」法案は、施設入所者に新たな負担を求め、「予防重視」の名で、在宅利用者のサービスを抑制するものです。どう変わるのかみてみましょう。 新予防給付軽度者へのサービス抑制法案では、介護の必要度が比較的軽い高齢者の重度化を予防する「予防重視型システムへの転換」として、「新予防給付」を新たに創設します。 「新予防給付」の内容は、筋力トレーニングや栄養指導、口腔(こうくう)ケア機能向上(歯磨き指導)などです。対象となるのは、現行制度で「要支援」と「要介護1」と認定されている高齢者の多数。新制度では、認定の区分名称も変わり「要支援1」「要支援2」と認定されることになります。 「新予防給付」で、これまで利用していた訪問介護などは、サービスの内容、名称も変わり、生活機能を低下させるような家事代行型の訪問介護は原則行わないとしています。例外的に行う場合でも、期間や提供方法が限定されます。介護報酬単価(サービス価格)や要介護度別の給付上限額(支給限度額)も引き下げられます。 介護給付費を抑えるため、「介護予防」と「給付の効率化」の名で軽度者のサービス利用を抑制することが目的です。 施設利用者に大幅な負担増法案には、施設に入っている人への大幅な負担増も盛り込まれました。入居者の食費や居住費を保険給付の対象からはずして、原則として全額自己負担にするというものです。他の項目に先がけて、今年十月からの実施をねらっています。 対象となる施設は、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設の介護保険三施設です。短期間だけ入所するショートステイも含まれます。 さらに、通所介護(デイサービス)や通所リハビリでも、食事代を保険の対象からはずして全額自己負担とします。 一カ月あたりの負担額(厚労省のモデルケース)は、特養ホームの個室に入っている要介護5の人の場合、一割負担の二万六千円にくわえて、居住費が六万円、食費が四万八千円の合計十三万四千円になります。現行より二万七千―三万七千円の負担増です。 四人部屋などの相部屋でも、利用者負担は月額八万七千円となり、現行より三万一千円も値上げされます。 保険料設定方法と集め方変更六十五歳以上の人が負担する保険料については、低所得の人の金額の決め方と徴収方法の変更を打ち出しました。 お年寄りの保険料は現在、所得に応じて第一段階から第五段階まで五段階に分かれています。法案ではこのうち、住民税の非課税世帯を対象にした現行の「第二段階」の保険料(平均より25%引き)を二つに分割。年金収入が年八十万円以下で、年金以外に所得がない人を「新第二段階」とし、現行よりも保険料の割引率を大きくするとしています。 一方で、政府・与党の大増税計画によって、住民税非課税から課税となる高齢者が多数でてきます。たとえば、保険料の平均額(第三段階)が月三千円の自治体で、世帯全員が非課税だった人(第二段階)が住民税を課税されるようになると、保険料は第四段階まで上がり、月千五百円もの負担増となります。今回の見直しにあたって放置できない重大課題です。 保険料の集め方では、年金から介護保険料を天引きする特別徴収の対象を、新たに障害年金と遺族年金にも広げることを盛り込みました。 低所得者対策補足的給付で「軽減」施設利用者から徴収する居住費、食費の負担が重すぎるため、生活保護受給世帯や住民税非課税世帯など低所得者の負担を軽減する「補足的給付」が導入されます。 世帯の状況に応じて「負担の上限額」を設定し、各施設が設定する居住費、食費との差額を国から給付するという仕組みです。 住民税非課税世帯で年金などの年収が八十万円以下の個室利用者の負担額の上限は、居住費が月二万五千円、食費が月一万二千円となります。厚労省のモデルケースでは、個室の居住費が月六万円、食費が月四万八千円ですが、補足的給付として居住費で月三万五千円、食費で月三万六千円が給付されたことにするものです。 現行制度に比べて、負担が軽くなる世帯もありますが、住民税非課税で年収八十万円を超える世帯では、月一万円を超える負担増になる人もいます。 対象年齢引き下げは09年度に結論介護保険の対象年齢の引き下げについては、法案の付則に二〇〇九年度をめどに所要の措置を講じる、と明記。今後の検討で実現をめざすことが盛り込まれました。 現在は四十歳からとなっている介護保険の加入年齢を引き下げることで、保険料を支払う人の数を一気に増やすねらいがあります。 保険料の徴収年齢について、厚労省は、最大で二十歳まで引き下げることを検討中です。四十歳未満の人からも保険料を集めることと合わせ、介護保険と障害者福祉を統合する方針。介護の提供対象に若年の障害者も加える計画です。 「痴呆」→「認知症」呼びかたを変更法案では、これまでの「痴呆(ちほう)」という呼び方を、「認知症」に変更します。 痴呆という呼び方は、実態を正確に表していないため誤解や偏見をまねくという指摘を受け、厚労省は昨年六月からこれにかわる名称を検討してきました。その結果、覚える、見る、考えるなどの機能を総称する「認知」という言葉を用いて、「認知症」という新しい呼び方にすることを決めました。 |