2005年2月16日(水)「しんぶん赤旗」 京都議定書きょう発効多国間協力の勝利地球温暖化防止のための京都議定書が十六日発効します。先進国は二〇一二年までに一九九〇年比で二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを5%削減するとの義務の達成がいよいよ現実の課題となります。日本はどう対処すべきか。京都議定書の削減達成期限後の一三年以降はどうすべきなのでしょうか。 今年は最も暑い年?温室効果などで今年の世界の平均気温は観測史上で最高になる可能性がある―米航空宇宙局(NASA)のゴダード宇宙研究所は十日、こんな見通しを発表しました。これまでの最高は一九九八年(約一五度)。ついで〇二年、〇三年、〇四年の順です。地球温暖化の傾向は、はっきり示されています。一月に神戸で開かれた国連防災世界会議でも近年の自然災害の多発の背景に温暖化があることがブッシュ米政権の反対を押し切って確認されました。 この温暖化を少しでも食い止めようとしてつくられたのが京都議定書です。九七年十二月に京都で開かれた気候変動枠組み条約第三回締約国会議(COP3)で、徹夜の激論の末、合意されました。〇八―一二年の「第一約束期間」に、先進三十八国の温室効果ガスの排出量を九〇年比で5%削減することを義務づけました。国別の削減目標も決まりました。 米の妨害に屈せず議定書作成には米国も参加しました。米国内の反対論を説得するためとして、さまざまな妥協策を盛り込ませました。ところが〇一年に発足したブッシュ政権は、議定書は「米国経済の足かせになる」として一方的離脱を宣言。世界の排出量の24%を占める米国の離脱は、全世界に衝撃を与えました。 しかし昨年十一月にロシアが議定書を批准し、批准国の排出量の合計が先進国全体の55%以上との発効条件を満たし、発効に至りました。米国のルール破りに国際社会は屈しなかったのです。 欧州は減、日本は増8%削減の義務を負う欧州連合(EU)は、〇二年で2・5%削減しています。国別削減目標が8%のドイツは18・5%削減。8%削減目標の英国も14・5%減らしました。EU各国は企業ごとの排出枠も決めました。 英国は〇一年、燃料や電力の使用量に応じて企業に課税する気候変動税を導入しました。ドイツは政府と産業界が協定を結び、温室効果ガスを一二年までに35%減らすことを決めました。EUは昨年十二月、8%削減は一〇年までに達成可能だと発表しました。 EUでは一三年以降の「第二約束期間」のいっそうの削減をめざす検討が始まっています。EU環境相理事会は二月九日、産業革命前の平均気温比で気温上昇を二度以下に抑えるとの目標を再確認。▽京都議定書で除外された海運・航空分野も削減対象に加える▽発展途上国は「(先進国と)共通だが異なる責任」を負うとの原則に基づき途上国も参加できるようにする―などの戦略を合意しました。 これと対照的なのが京都会議議長国の日本です。排出量は8%(枠組み条約事務局によれば12・1%)も増加し、実質削減目標は雪だるま式に膨れ上がっています。 数値目標に基づく削減の義務化という京都議定書の考え方そのものに否定的な大企業側の抵抗を背景に、経済産業省と環境省が対立。ロイター通信は十四日、議長国・日本は「削減の先頭を切るのに失敗した」と報じました。国民レベルの努力は当然必要ですが、排出量の八割を占める企業や公共施設などの抜本的な取り組みがなければ、削減目標達成はおろか、排出量を増加から減少に転じさせることも不可能です。 13年以降どうする温暖化を放置すれば気温は百年間に一・四―五・八度上がり、海面は二一〇〇年までに九―八八センチ上昇すると予測されています。それを防ぐには、温室効果ガス排出量を50―80%削減すべきだと指摘されています。 京都議定書の削減目標は、温暖化防止の第一歩にすぎません。議定書は、一三年以降の対策検討を〇五年までに始めるよう求めています(第三条九項)。昨年十二月に開かれた枠組み条約第十回締約国会議(COP10)では、今年五月に、このための専門家セミナーを開くことを決めました。 枠組み条約にはとどまる米国は、京都議定書方式の削減義務化自体に反対しており、日本でも同様の議論が台頭しています。米国復帰が最優先だとし、国際合意をいっそう希薄な中身にしようとの主張も出ています。 経済成長の著しい中国やインドなどの途上国での削減をどう織り込むかも難題ですが、米国の議定書離脱は、問題をさらに複雑にしています。 京都議定書が発効したといっても、その目標の実現は、これからです。 一三年以降の対策を定着させるためにも、人類の存続を脅かす地球温暖化問題の原点に立ち返り、七年前の京都会議のときのような国民的討論を改めて盛り上げていくことが求められています。坂口明記者 |