2005年2月18日(金)「しんぶん赤旗」

京都議定書発効 強まる温暖化対策


 地球温暖化防止のための京都議定書が十六日に発効したことを受け、課題達成のため各国が取り組みを強めています。欧州連合(EU)、ロシア、中国の動きをみました。


EU

「京都」以後も主導

 【パリ=浅田信幸】欧州連合(EU)は、二〇〇八年から一二年までの五年間の温室効果ガス削減目標を定めた京都議定書の発効を受けて、二〇一三年後の「第二約束期間」の対応でも主導的な役割を果たす構えを明確にしています。

 執行機関の欧州委員会が九日明らかにした新提案は、今後二十年間、温室効果ガスの排出が増え続けるとの見通しから、「二〇五〇年までに全世界で一九九〇年比で少なくとも15%の削減が必要になる」と予測。「達成期限を定めた総量規制」という京都議定書の基本は、一三年以降の「新システムのもとで維持されなければならない」としています。

 また議定書に署名しながら離脱した米国、批准を拒否しているオーストラリア、議定書で義務化の対象になっていない中国やインドなど、大量に温室効果ガスを排出している国に、温暖化防止の枠組みへの参加を強く呼びかけます。「たとえEUが五〇年までに排出量を半減させても、他の大量排出国が同様に削減しなければ見るべき改善はありえない」からです。EUではこれまでに九〇年比で温暖ガス排出量を3%削減。昨年末の欧州委員会の報告によれば、議定書に定められた8%削減も一〇年までに実現可能だとみています。

 欧州委員会のディマス環境担当委員は九日、「気候変動とのたたかいは選択の問題ではなく必要性の問題だ」と強調。「われわれ(EU)は模範となって主導し続けるし、すべての国際的パートナーに対して枠組みに加わるよう強い圧力をかけ続ける」とのべました。

競う加盟国

 欧州委員会の提案は三月下旬のEU首脳会議で正式の議題に取り上げられ、中長期的な温室効果ガス削減の戦略が検討される予定です。

 個々のEU加盟国も、温暖化問題でイニシアチブを競っています。

 シラク仏大統領は十五日、先進国の排出量を五〇年までに九〇年比で75%削減しようと提案しました。二十一日のブッシュ米大統領との会談で提起するとしています。

 今年の主要国首脳会議(サミット)の議長国となる英国のブレア首相も、温暖化防止を今年の主要課題と位置づけ、五月にも予想される総選挙で「対米追随」との批判をかわす材料にしようとしています。しかし、英国の排出許容量を3%上方修正しようとし、欧州委員会との対立が深まっています。


中国

成長との調和重視

 【北京=菊池敏也】京都議定書が発効した十六日、北京で発効を祝うシンポジウムが開かれました。高い経済成長が続く中国は、いまでは米国に次ぐ世界第二の二酸化炭素排出国となっています。

 中国は発展途上国として、京都議定書が対象とする二〇〇八―一二年の間、温室効果ガスを削減する義務は課せられません。しかし、中国のエネルギー需要が増えるなか、同国が排出の増加をいかに抑えるかに、世界の目が注がれています。中国政府もその点を意識し、政策を模索しています。

 シンポジウムで発言した武大偉外務次官は、京都議定書の発効について、地球の気候変動に対処する行動が「歴史的意義をもつ一歩」を踏み出したと高く評価しました。温室効果ガスの排出削減や、植林などによる二酸化炭素吸収能力の向上など、中国政府が「国情に応じた一連の政策・措置」を制定したと述べ、今後も「貢献したい」と表明しました。

浪費が課題

 中国政府が、強調しているのが「科学的発展観」。経済成長だけに力を入れるのではなく、調和のとれた発展、持続可能な開発を重視する立場です。この観点が〇六年からの第十一次五カ年計画にどう反映されるのか注目されます。生産施設の老朽化や技術水準の低さから、エネルギー浪費体質の改善は大きな課題です。

 中国が注目しているのが、京都議定書が定める「クリーン開発メカニズム(CDM)」です。先進国と共同して温室効果ガス削減プロジェクトを実施し、削減分の一部を先進国が自国の削減分に充当できる仕組みです。中国では、風力発電やゴミ処理、砂漠地帯での植林といったプロジェクトが積極的に進められています。


ロシア

関連法はこれから

 【モスクワ=田川実】ロシアの経済発展・貿易省は十五日、京都議定書の義務履行のため、行動計画案を政府に提出しました。昨年秋に議定書を批准し、発効の立役者となったロシアですが、関連法の整備はこれから。当初注目されていた温室効果ガスの排出枠売却は、二〇〇六年末に開始する見通しです。

 経済発展・貿易省の行動計画案は、一〇年までに、発電・輸送などの部門で8%の効率アップ、自治体の集中暖房の設備更新テンポの倍加、植林の15―25%増などを列挙。企業に対する排出ガス量の規制は、議定書の履行状況をみながら検討します。

売却で議論

 やや悠長な対応の背景にあるのは、ソ連崩壊後の経済力低下です。「どんなに経済成長で燃料需要が増えても、一二年までには(議定書で義務づけられている)一九九〇年の排出レベルを超えない」(同省のガブリロフ資源利用局長)との読みがあります。ロシアは九〇年比で0%とすることが議定書で定められています。

 排出枠の他国への売却は、枠の「余裕」を自ら狭め、経済発展を規制しかねないとして、政府内でも意見が分かれています。今のところ国外から排出枠の購入申し出はなく、「すでに義務枠を超えている日本が、わが国の排出枠に一番関心を示している」(グリーンピース・ロシアのチュプロフ氏)状況といいます。

 ロシア地域環境センターのクラエフ氏によると、日本政府、三井、三菱、トヨタ、出光など各社は九〇年代末からロシア政府と協議。日本側がロシア極東の発電所の設備更新を支援し、ロシアの排出枠を受け取るなど約二十の事業案が出ていますが、具体的な決定はされていません。

 ロシアの排出量は二〇〇〇年に世界の6・2%。米国(24・4%)、中国(12・1%)に次ぎ、第三位です。



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