2005年2月25日(金)「しんぶん赤旗」 国立大学今なぜ?合格の 笑顔曇らす 学費増来年度予算案で国立大学の授業料標準額が五十二万八百円から五十三万五千八百円へ一万五千円の値上げとされ、半数を超える国立大学がこれと同額の値上げを発表しています。来年度の新入生、在校生から対象です。据え置きを決めたのは、いまのところ一校だけ。なぜ授業料値上げなのでしょうか。 世界でも異常な高額
大学進学を前にした受験生の間で値上げへの不安がひろがっています。「たとえ合格してもあまりうれしくない。バイトで学費を稼ぐつもりだけど、払えるかどうか…」―ある大学の入学試験会場で聞きました。日本共産党のホームページにも「高校三年生ですが、家の家計が苦しくて大学に行きたいのにあきらめざるをえません」などの声が寄せられています。民青同盟の受験生アンケートでは「大学生活への不安」に「学費が高い」という回答がトップ(40%)でした。 父母からも値上げ反対の声があがっています。「これ以上の学費が上がることは重荷であり、進級できないくらい深刻です」(学生自治会の父母アンケート)。世界でも異常な高学費は、すでに負担の限界です。実際、二人の大学生をもつ家庭では、学費と生活費の負担が年に四百四万円という高額になります(国公私立全体の平均、二〇〇二年度文科省学生生活調査)。これは勤労者世帯の平均年収の六割以上。六年連続で減っている家計収入への追いうちです。 国が交付金削るから
多くの大学が値上げを決めるのは、大学の主な財源である国からの運営費交付金が、授業料値上げによる増収を前提に削減されるからです。もともと、教育研究の効率化や付属病院の経営改善を名目にして交付金が毎年削減されるしくみ(来年度は二つで百八十九億円の削減)によって、大学は“兵糧攻め”にあっています。さらに授業料値上げにみあう八十一億円の交付金が削減される事態に、多くの大学が「苦渋の選択」に追い込まれました。「教員の削減等教育の質を落とさない限り、この改訂(値上げ)を見送ることは不可能」として、学長が学生に「おわび」を表明した大学もあります。 昨年四月の国立大学の法人化にあたって、国会決議は「法人化前の公費投入額を十分確保する」「経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならない」ように政府に求めていました。授業料値上げのための交付金削減は、この決議に反するものです。 私学との格差いうがにもかかわらず、なぜ授業料標準額の値上げか。日本共産党の石井郁子衆院議員の質問に対し、政府は「私学と国立の格差を埋める必要がある」(谷垣財務大臣、二月十五日、衆院予算委)とのべました。 しかし、私学との格差を是正するには、私学の学費を下げるべきであり、国立を上げるというのはあべこべです。私学の学費は、初年度納付金が約百三十万円。理科系学部は約百四十八万円、医歯系学部では約五百六万円という高額です。私立大学への国庫助成を経常費の「二分の一とするよう努める」(一九七五年国会附帯決議)とされながら、逆に12%にまで減らされたからです。 大学関係者も「高等教育の予算はもう少し増やして私学助成をすれば、格差は縮められます。国立大学の授業料を上げることにはならない」と指摘します(島根大学長、本紙二月六日付)。財務省は、学生数の減少を理由に私学助成をさらに削減する方針です。これでは国公私立大学全体の連鎖的な値上げに拍車をかけることになります。
国立大学の授業料標準額 国立大学の学費は、03年度までは毎年国の予算で一律に決められていました。国立大学が法人に移行した04年度からは、政府が標準額を定め、その110%を上限として、各大学法人が決めるしくみに変わりました。 高等教育予算充実こそ
日本はOECD加盟三十カ国のなかで高等教育費の家計負担割合がもっとも重くなっています。国内総生産(GDP)に占める高等教育機関への公費支出の割合は加盟国平均で1・0%に対し、日本はたった0・5%という低い水準だからです(グラフ)。日本、カナダ、スロバキア以外は、国の財政が厳しいなかでも一九九五―二〇〇一年の間に教育支出の割合を増やしています。 日本共産党は、十七日に発表した「二〇〇五年度予算案の抜本的組み替え要求」のなかで、国立大学費値上げの中止と、値下げへの転換を求めました。高等教育予算を充実させ、学費負担の軽減へ踏み出すべきです。 |