2005年2月26日(土)「しんぶん赤旗」

「つくる会」資料だけ配布

教科書採択の説明会

「不公平」と批判

広島県教委


 広島県教育委員会が、今夏の中学校教科書の採択に向けた教育事務所や市町教委を集めた今月七日の担当者会議で、「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)の会報や同会主導でつくった歴史教科書(扶桑社発行)の採択を報じる新聞コピーなどを添えた資料を配っていたことが二十五日、わかりました。


写真
中学校教科書の採択に向け、担当者らに配布された「つくる会」会報などを添える広島県教委の資料

 二〇〇六年度から四年間使われる教科書採択を控えた会議には、県内の六つの教育事務所や市町教委の担当者ら十数人が出席。配布した「教科等別指導主事会議(教科書担当部会)資料」はA4判四十三ページで、そのうち、つくる会が発行する「FAX通信」など、会の関連資料が八ページを占めています。扶桑社以外の教科書に関する資料はありません。

 資料の「FAX通信」は一昨年十月から今年一月までの三号分、六ページ。教科書検定・採択をめぐり、扶桑社発行の歴史・公民教科書を推す自民党県連など各地の地方議会の動きを紹介しています。

 さらに、「偏向教科書の適正化」や教育基本法の改悪を盛り込んだ今年の自民党の運動方針案などを掲載した産経新聞記事のコピー二ページを添えています。

 県教委は「つくる会の教科書を特別扱いしたわけではない」と説明しています。

 全広島教職員組合の今谷賢二書記長は二十五日、「市町教委の担当者などに対し、『指導、助言』の立場にある県教委が特定教科書に関する資料を配布することは、教科書採択の公正確保の観点から重大な問題がある」と指摘するコメントを発表しました。

 新しい歴史教科書をつくる会 一九九七年に侵略を美化し、改憲を主張する学者・財界人などが設立。日本が起こした戦争は正しかったという立場から中学校の歴史と公民の教科書をつくり、その採択運動をしています。その教科書は国内外の大きな批判を浴び、前回二〇〇一年の採択では東京都と愛媛県の障害児学校などごく一部でしか採択されませんでした。同会は今回10%の採択率を目標に掲げ、各地の教育委員、議員などへの働きかけを強めています。



実質的には押しつけ

 浪本勝年立正大学教授(教育行政学)の話 特定の団体の情報だけを八ページも配るなどというのはまったく理解しがたい。都道府県教育委員会は市町村教育委員会に「指導・助言」をする立場にありますが、その範囲を大きく超えた異常なやり方だと思います。

 検定を通った教科書は対等・平等に扱わなければならず、一方的に「つくる会」側を肯定するような情報だけを伝える特別扱いは、文部科学省が強調している公正な採択のあり方からいっても許されないはずです。

 法的には、県教委と市町村教委は対等な関係にあり、「指導・助言」に強制力はありません。しかし、現実には県のいうことに市町村が従わざるを得ない力関係になっています。そういう現状のもとでは実質的に「つくる会」教科書を採択しろという押しつけになり、不法・不当な行為です。


行政の動き 監視必要

 子どもと教科書全国ネット21の俵義文事務局長の話 広島では国会議員や地方議員、右翼団体の「日本会議」などが「つくる会」を支持して活発に活動しています。そうしたなかで、県教委が「つくる会」教科書の採択を狙ってやったことだと思いますが、特定の団体の情報だけを配るなどというのは常識では考えられません。ここまでやるのかと驚いています。断じて許されないことです。

 埼玉県で「つくる会」の高橋史朗・前副会長が教育委員に任命されたように、行政が「つくる会」を後押しする不当な動きが今後も各地でさまざまな形で出てくる可能性があります。地域の人たちが厳しく監視していく必要があると思います。



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