2005年3月3日(木)「しんぶん赤旗」
国歌斉唱 強制は許されるの?
〈問い〉 私たちは卒業式に「君が代」をうたわないことにしたいと考えていますが、そうすると、東京では、教師が処分をされると知って、悩んでいます。こんな強制は許されるのですか?(東京・高三)
〈答え〉 現在、国旗・国歌は法律で決められていますが、それは政府が公的な場で国旗・国歌を「国と国民の象徴」として用いることを意味するものです。国旗・国歌にたいする一人ひとりの態度については、いっさい強制しない、というのが民主主義の原則です。
日本には「思想・良心の自由」(第19条)「信教の自由」(同20条)をかかげる憲法があります。この憲法のもとで、「君が代」の意味が信条とあわないから歌いたくないという人や、強制が価値観とあわないという人に強制することは、あってはならないことです。
政府も「国旗・国歌法」の審議で「子どもたちの内心にまで立ち入って強制しようという趣旨のものではなく」(99年7月28日、参院本会議、小渕恵三首相)とし、河村建夫文科相(当時)も「この考えは今も変わっていない」(04年6月11日、衆院文部科学委員会)と答弁しています。東京都は、国の答弁さえふみにじっています。
国歌を斉唱しない自由が生徒にある以上、生徒が歌わないのを理由にした教職員の処分も憲法上、許されません。
東京都教育委員会は「国歌を斉唱するものとする」との学習指導要領どおりに指導できない教員は「指導力不足」として処分する、といいます。けれども、こうした学習指導要領の運用の仕方もまちがいです。学習指導要領は本来、学校での学習の目安にすぎません。教育基本法は第10条で、行政機関によるものを含め、教育への「不当な支配」を禁じ、教育の自主性を保障しています。教育委員会が学習指導要領をふりかざし、個々の学校での教育を権力的に拘束することはなんの正当性もありません。
東京での国歌斉唱の強制は、教師に人権感覚をマヒさせ、権威への服従を強いるもので、憲法の理想を実現する教育基本法の「教育の目的」(第1条)にも反しています。(京)
〔2005・3・3(木)〕