2005年3月7日(月)「しんぶん赤旗」
年金減 なぜ
社保庁に抗議やまず
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「どうして年金が減るんだ、とカチンときた」。東京都府中市に住む川島孝太郎さん(81)は年金振込通知書を受け取ったときの気持ちを語ります。二月中旬、社会保険庁から送付されてきた一枚の通知書には、これまでゼロだった所得税が三千九百三十四円(二カ月分)天引きされることが記されていました。
家計簿は告発する
もし病気したら
妻スエさん(77)と二人暮らしの孝太郎さん。現在は、月十九万四千円の年金と月八万円のスエさんの年金で暮らしています。
「健康で過ごせたらいいが、病気をしたら心配」(孝太郎さん)と語る二人の暮らし。光熱費や電話代、交際費などで、「貯蓄なんてできない」と声をそろえます。
京都府舞鶴市に住む坂田三雄さん(76)も二月の年金支給額が減りました。「銀行にいって振り込まれた額をみてがっくりきました」
新たに課税された所得税の天引きによって二カ月分で二千五百円の減額になりました。介護保険料とあわせて約七千円(二カ月分)が年金から天引きされていることになります。
「年四万二千円ですやろ。夫婦で国内旅行に行けるぐらいの額が減らされるんです」と語る三雄さん。ただでさえ倹約している暮らしです。「せめて年に少しは旅行にでも」というささやかな望みを、小泉内閣は奪うことになりました。
負担増まだある
「取られる分だけ増えるなんて。希望なんてもてません」と川島孝太郎さん。しかし、現在、住民税が非課税の川島さん宅は、さらに来年六月からの住民税が課税になる可能性があります。
住民税の老年者控除の廃止や公的年金等控除縮小、小泉内閣が計画する高齢者の非課税措置廃止などによる影響です。
それにともなって夫婦の介護保険料の段階が上がり、連鎖的に負担が増えます。東京都の場合はさらに、住民税が課税になればシルバーパスも、現在の千円から二万五百十円に跳ね上がります。
「そりゃあ大変だ」と孝太郎さん。「年寄りに早く死ねっていうことですか」とスエさん。こんな政治を変えるため、「黙ってはいられない」と二人は声をそろえます。(山田英明)
新たに課税93万人 影響は500万人
12―1月分の年金が支払われた二月十五日以降半月以上たった今も、社会保険業務センター中央年金相談室には、問い合わせの電話が相次いでいます。担当者も「回線をいっぱいいっぱい使って対応している」と語る状態です。
年金支給額が減ったのは、そのほとんどが公的年金等控除の縮小と所得税の老年者控除の廃止(いずれも一月実施)によるものとみられます。
小泉内閣が決めたこの増税の影響を受けた人は約五百万人(財務省調べ)。これまでゼロだった所得税が新たに課税され、厚生年金から源泉徴収されるようになった高齢者は約九十三万人(社会保険庁調べ)にのぼります。
社会保険業務センター中央年金相談室の榎本雅孝課長補佐は、毎年二月には税金関係の問い合わせが多いとしながら、「これまでは説明で済んだものが、『税制改正によるものです』と説明しても、おさまりのつかない問い合わせが多くなっています」「一気に年金が減ったことに対する抗議の声も増えています」と語ります。