2005年3月25日(金)「しんぶん赤旗」
主張
介護保険見直し
はしご外して何が予防ですか
介護保険制度の見直しについて、政府が国会に提出している改悪法案の審議が始まっています。
法案は、保険給付を抑えるために、サービスの制限と負担増を柱にしています。
家事サービスを制限
サービスの制限は、これまで要支援や要介護1と認定された軽度の高齢者が対象です。高齢者をホームヘルパーが訪れ、洗濯や掃除などのサービスを行う「家事代行」型の訪問介護を原則として行わないとしています。
政府は、“介護予防が大事だから、生活機能を低下させるような家事援助は行わない”といいます。
しかし、介護度の軽い人への家事援助が生活機能を低下させているという根拠はなく、政府が勝手に決めつけているだけです。
訪問介護は、高齢者の安心感と生活への意欲を引き出し、在宅生活を維持・継続するうえで不可欠のサービスです。家事援助という、“はしご”を外したら、重度化を招きかねず、介護予防にも逆行します。
高齢者が要介護状態になることをできる限り防ぐとともに、要介護状態になってもそれ以上悪化しないようにすることは大切です。ところが、対象は軽度の人だけで、中度以上の高齢者にたいする重度化防止策はありません。“予防重視型システムへの転換”は、軽度の人のサービス制限の口実にすぎません。
介護保険三施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型医療施設)の利用者の居住費と食費を、保険給付から外して自己負担にする問題も、所得の低い高齢者を、施設利用から事実上締め出すことになりかねません。
政府は、居住費と食費の利用者負担を導入する理由として、“在宅と施設のバランスがとれないからだ”としています。バランスをとって負担を軽くするというならともかく、実態は逆です。
老人保健施設や療養型医療施設に入所している高齢者は、在宅に復帰する可能性があり、自宅を残したままにしています。自宅以外に施設でも居住費をとられることになったら、二重の負担になります。
しかも、施設利用者は入所者に限りません。在宅サービスであるショートステイやデイサービスも施設利用であるとして、居住費や食費についての新たな負担を求めています。「バランス」を持ち出すのは負担増のためです。
政府は、保険の給付が在宅利用に比べ施設入所の方が多いので減らす必要があるといいます。しかし、もともと在宅サービスの利用が抑えられているのです。
利用料が高すぎるために、在宅サービスを受けている高齢者は、利用限度額の四割程度しかサービスを受けていません。在宅のサービス抑制こそ問題です。
改悪法案は撤回せよ
現行の介護保険についての国民の不安は、保険料や利用料が重すぎて必要なサービスが受けられない、負担増も続き、施設不足も深刻で解消されないことです。
政府は、見直しをいうなら、保険料や利用料を支払い能力に応じた負担に改めていくことが必要です。
在宅でも施設でも安心して暮らせるように、特別養護老人ホームの増設をはじめ基盤整備をすすめるべきです。
介護不安を拡大し、介護をめぐる国民負担増と給付減のレールを敷く介護保険の改悪法案は、撤回するよう求めます。