2005年4月1日(金)「しんぶん赤旗」

消費税16年 1人118万円

どこ消えた?

崩れた2つの口実


 一九八九年に導入された消費税は、四月一日で十七年目に入ります。この十六年間で国民が納めた消費税額の累計は約百四十八兆円にのぼります。赤ちゃんから高齢者まで国民一人あたり百十八万円になる計算です。

 (山田英明)


福祉のためというが

年表

 消費税導入は「(高齢化の進展による負担の増大など)今後の経済・社会の変ぼう(中略)等に十分に対応しうるため」(一九八八年四月、政府税調の中間答申)だとされました。「福祉」を理由にした庶民増税です。

 ところが、「福祉のため」という口実はどこへやら。政府は、消費税導入後も、消費税増税(九七年)後も、医療、年金、介護など、社会保障制度を相次いで改悪してきました。

 もともと消費税は、所得の低い人ほど負担が重くなる「福祉破壊税」です。福祉を語るに最もふさわしくない税制です。

財政再建というが

グラフ(国と地方の借金)

 「財政再建のため」という口実もくずれています。消費税導入後、国と地方の借金(長期債務残高)は悪化の一途をたどっています。

 消費税が導入された八九年に、約二百五十四兆円だった国と地方の借金。〇五年度には七百七十三兆円(当初予算)にまで膨れ上がる見込みです。国民一人あたりの借金は、約六百万円を超えます。九〇年代、国と地方で、社会保障は約二十兆円に抑える一方、公共事業には年約五十兆円という大盤振るまいをしてきたからです。

 5%への税率引き上げ論議でも、すでに「財政の現状は深刻」(九四年六月、政府税調答申)と「財政再建」が口実にされました。ところが、消費税増税など九兆円の負担増は、深刻な不況を招き、税収不足で借金を増やす結果となりました。

法人税減収を穴埋め

 福祉の充実や借金削減にも回らなかったとしたら、消費税収はいったいどこに消えてしまったのでしょうか。

 国民がこの十六年間に支払った消費税額の累計百四十八兆円は、法人三税(法人税、法人住民税、法人事業税)の減収額の累計約百四十五兆円とほぼ同額になります。法人税の減収分の穴埋めに、消費税が使われてきた計算です。

 法人税収は、不況による影響によって落ち込んでいますが、それだけではありません。政府は、消費税導入以降、相次いで法人税率を引き下げてきました。八九年当時40%だった基本税率は、現在30%になっています。

 もともと財界は、法人税減税の財源として大型間接税(消費税)の導入を求めてきた経過があります。結果は、財界の要求どおりになっています。

グラフ

このうえ、さらに

 現行5%の消費税率をさらに引き上げる議論が本格化しています。

 「在任中は、消費税を引き上げないとは、この間に、徹底した行財政改革により税金のむだ遣いを見直すためだ」(二月二十五日、衆院本会議)と言うのは小泉首相。ほんとうの無駄にメスを入れようとしているのではありません。“庶民のくらしや福祉を切り詰めたうえで消費税増税を”というシナリオです。

 社会保障関連の給付削減や負担増の計画は目白押しです。そのうえ、またも「福祉」を口実に福祉破壊の消費税増税を自民党、民主党が競い合っています。

 一月二十四日の衆院本会議。「(年金財源に)消費税の活用は避けられない」と求めた民主党の岡田克也代表にたいし、「(年金財源として)消費税の活用ということも当然検討の対象になる」と小泉首相は答えました。

 消費税率を〇七年度に10%(将来は18%)に引き上げることを求めている日本経団連は、その狙いが、さらなる法人税減税や社会保障の企業負担軽減の財源づくりにあることを隠そうともしません。

スケジュール

税の使い方、集め方で

グラフ(公共事業費)

 消費税増税に頼らなくても、税金の使い方や集め方を変えれば、社会保障を充実させていくことは可能です。

 欧米と比べてもダントツの公共事業。需要が増える見込みもないのに、関西国際空港に、さらに二本目の滑走路をつくろうとまでしています。米国に次ぐ五兆円もの軍事費。イラク派兵にも六百四十八億円もの税金がつぎ込まれました。在日米軍にたいする「思いやり予算」は、二千三百七十八億円です。

 予算の無駄をあらためれば、国、地方あわせて新たに十兆円程度の財源を生み出し、国民のくらしと社会保障に振り向けることができます。

 消費税導入以降、法人税率引き下げによる大企業への減税効果は年間で約二兆五千億円にのぼります。所得税の最高税率引き下げなど、高額所得者への減税も行われてきました。

 所得税の最高税率や法人税率の見直しなど、空前の利益をあげる大企業や高額所得者に応分の負担を求めれば、国、地方あわせて約八兆円の財源を計画的に確保することができます。

 税金の使い方、集め方を「国民第一」に土台から改革すれば、財政危機打開の道も開きながら、安心できる社会保障制度を築くことができます。

グラフ(大企業の減税額)

表(大企業上位10社の減税額)

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