2005年4月3日(日)「しんぶん赤旗」
主張
郵政民営化
背後に見えるアメリカの影
アメリカの通商代表部(USTR)が三月三十日、二〇〇五年の「外国貿易障壁報告」を発表しました。日本の構造改革で、アメリカ政府がとりわけ郵政民営化を重視してきたことを強調しています。
USTRはアメリカの通商交渉を担う大統領直轄の機関です。
日本に構造改革を要求する理由について、USTRは今回の報告の中で率直にのべています。「アメリカ企業が日本の市場に参入する機会を増やす上で、構造改革は巨大な役割を果たす」からだと。
業務命令と勤務評定
小泉内閣は今日にも郵政民営化法案の骨子をまとめようとしています。この期に及んでも、与党内で「なぜ民営化なのか」が問題になっています。振り出しに戻るような議論そのものに、郵政民営化の道理のなさがあらわれています。
なぜ民営化かという“旗幟(きし)”を鮮明にできないのは、郵政民営化が、金融業界とアメリカの身勝手な要求を発信源にしているからです。
金融業界はみずからのもうけ口を広げるために郵貯・簡保の縮小・廃止を求めてきました。アメリカも、郵貯・簡保の買収などを通じて、自国の企業と経済の繁栄を図るために民営化を迫っています。
昨年九月の日米首脳会談では、ブッシュ大統領の側から郵政民営化を持ち出し、進み具合を質問。小泉首相は「しっかりやっていきたい」と答えています。
首相は就任直後の〇一年六月、同大統領との初めての会談で「成長のための日米経済パートナーシップ」の開始に合意しました。「パートナーシップ」とはいうものの、実態は大違いです。アメリカが日本の構造改革に注文を付け、日本の取り組みを評価する一方的な枠組みにほかなりません。
枠組みの柱となっているのが、USTRと外務省の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」、米国務省と経済産業省の「投資イニシアティブ」の二つの交渉です。
「規制改革及び競争政策イニシアティブ」で、USTRが昨年十月に日本政府に示した「要望書」は、郵政民営化の基本方針の決定を「重要な一歩」と賞賛。十数項目にわたって具体的な要望を列挙しています。民営化は「市場原理に基づいて行われなければならない」とし、郵貯・簡保の政府保証の完全撤廃を求め、これらを民営化法案に反映するよう要求しています。
USTRは米国の要求に対する日本の取り組みを「報告書」として、例年、五、六月ごろに日米の両首脳に提出します。「要望書」が「業務命令」だとすれば、「報告書」は「勤務評定」に当たる関係です。
麻生総務相は、郵政を株式会社にして郵貯・簡保株を売却することになれば、外資に買収される懸念があると語っています。実際に、在日米国商工会議所は、民営化会社の株式を外国人も取得できるようにすべきだと要求しています。
民営化の撤回を求める
「日本を外国企業にとって魅力ある進出先とするための施策を講じ、五年後には日本への投資残高の倍増を目指す」。「投資イニシアティブ」に基づいて、小泉首相は〇三年の施政方針演説でこう表明しました。アメリカは大歓迎です。
郵政事業は国民共有の大切な財産です。事業の在り方がアメリカの要求で左右されたり、ましてやアメリカ企業の食い物にされることを許せるでしょうか。
郵政民営化の撤回を求めます。