2005年4月7日(木)「しんぶん赤旗」

主張

介護保険改悪法案審議

基本的な中身すら示さずに


 介護保険制度の見直しで、いま受けている介護サービスがいったいどうなるのか。その点を国会審議でまったく明らかにしないまま、政府は介護保険改悪法案の早期成立をねらっています。

 法案は、介護保険の介護度が低い軽度の人のサービスを抑制し、施設入所・通所の利用者負担を増やす内容です。

不安が募るばかり

 軽度の人にたいして、訪問介護の「家事代行型」サービスを「原則行わない」としている問題は、介護の現場で大きな不安となっています。

 日本共産党の山口富男議員の質問で、百六十万人がサービスの制限を受けることが明らかになりました。ところが、調理、洗濯、掃除、買い物など家事にかかわるサービスのどれが制限され、廃止されるのか分かりません。山口議員が、具体例をあげて質問しても、「専門家の方々が集まって決める」といって逃げるばかりです。

 百六十万人といえば、軽度者といわれる人の八割を占め、要介護認定者全体の四割です。高齢者と家族にとっては大問題なのに、“自分の介護サービスがどうなるのか”は、来年四月の施行直前にならないと分からない。予防どころか不安が募り、状態の悪化につながりかねません。

 小泉首相は、本会議(三月二十二日)の答弁で「軽度者の居宅サービス利用は大幅に増大したものの、介護の状態の維持改善につながっていない」ので、家事代行型の訪問介護を見直すとのべています。

 しかし、厚生労働省が出している「介護給付費実態調査結果」で、一年間継続してサービスを利用した軽度(要介護1)の人の八割以上が「改善」「維持」されていることが明らかになっています。介護度の重い人と比べても、軽度の人が一番状態が維持されています。調査は在宅と施設を一緒にしたものであり、いっそうの分析のためには、「在宅」と「施設」を区分けしたものが必要です。

 山口議員の質問にたいし、尾辻厚生労働相は資料を「出す方向で努力する」と答えました。

 軽度者へのサービスで状態が改善されていないとして、厚生労働省が利用している調査データは、施設に比べて在宅の軽度者の方が改善が進んでいることを分析していた調査だったことも明らかになりました。

 このように、政府がいう「維持改善につながっていない」という前提そのものが、何の根拠もない“決めつけ”であることが、審議のなかで明らかになりました。

 サービス抑制の根拠となっている前提が崩れており、軽度者の訪問介護切り捨ての道理はありません。

 法案は、デイサービスやショートステイの食事代や居住費を保険給付から除外し、すべて自己負担にすることを盛り込んでいます。

 食事代はこれまで自己負担だった食材費に加え、新たに調理コスト分が負担増となります。これは軽度の人だけでなく、要介護2以上の人も対象です。

軽度の人だけでなく

 政府は、民主党議員の質問にたいし、訪問介護での調理の代行は、「不適切なサービス」であり、「(デイサービスなどの)通所介護で調理コストが自己負担となることと整合性がとれない」と答えています。

 軽度だけでなく中重度を含め、調理などの家事サービスを保険給付から外していく可能性を示したものです。負担増と必要なサービスの切り下げを、許すわけにはいきません。


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