2005年4月9日(土)「しんぶん赤旗」
中国の貧富の格差 どうみる?
〈問い〉 中国は「社会主義市場経済」を掲げていますが、所得格差が広がり、農村の貧しさは深刻のようです。どうみればいいでしょうか。(大阪・一読者)
〈答え〉 中国政府発表によると、04年の都市部住民一人あたりの可処分所得は、農村部住民一人あたりの純収入の3・2倍になっています。90年代は2倍台でしたが、02年から3倍を超えました。
ただ農民収入がこの間着実に伸びてきたことは確かです。90年と比べれば農民収入は約4・5倍になっています。都市部住民所得は同期間で5・5倍に伸びています。農民収入はかなりのテンポで増えているが、都市部がそれ以上の成長なので格差が広がっています。
中国は78年から計画経済路線を調整し、外資も導入するという「改革開放」政策を進め、92年からは市場の調整に重点を置く「社会主義市場経済」を打ち出しました。所得政策では「豊かになれる層は先に豊かになり、低収入層を引き上げる」路線をとってきました。現在の格差問題はその過程で現れている現象です。
中国政府と政権党である中国共産党は所得格差問題を重視して、対策を強めています。中国共産党は02年の党大会で「農村経済を発展させ、農民の収入を増やす」ことを重点政策にしました。同時に「農村における余剰労働力を非農業分野と都市・町に移す」と打ち出しました。
温家宝首相は、3月に開かれた全国人民代表大会(日本の国会に相当)で報告し、農村・農業への大胆な財政投入を打ち出しました。各地方で課税してきた「農業税」を「来年末までに撤廃する」と表明。所得税制を改善するなどして、所得格差の是正も提起しました。
貧困層をどれだけ減らしてきたか。国際的目標の一つである「1日1ドル以下で生活する人の数」をどれだけ減らすか―でみると、中国では90年に3億8千万人いたこの層は、01年には2億1千万人にまで減りました(世界銀行の調査)。
中国はいま「国内総生産(GDP)を00年から20年までに4倍にする」という経済発展の目標をたてています。この過程で「格差」がどのように是正されるかは、中国の「社会主義市場経済」の前進度合いをはかるものとして注目されます。(寺)
〔2005・4・9(土)〕