2005年4月11日(月)「しんぶん赤旗」
どうなる“郵政政局”
強硬姿勢の首相 強まる反発
郵政事業民営化で小泉内閣と自民党との最終調整が正念場を迎えています。内閣の責任問題や国会解散などの不測の事態も無しとしないだけに、与党ばかりか永田町全体に緊張が広がっています。
「もう政府案(法案の骨格)は取りまとめたから、今月中に国会に提出します」「(変える余地は)ありませんね。いい案ですよ」。小泉首相は八日、記者団にこうのべました。自民党の郵政改革関係合同部会(園田博之座長)がこの日、四日間連続の議論の末に、意見集約を週明け以降に持ち越した後も、強気の姿勢は変わりません。
自民党執行部などは「四月中の法案提出」を目指す“窮余の策”として、法案を提出した後の「国会審議での法案修正」を模索する考えです。しかし、これでは決着の先送り。国会会期の大幅延長など先行きはいっそう不透明になりかねません。
◆出席96人
緊迫化の背景にあるのは、反対派の動きです。七日、都内で開かれた綿貫民輔前衆院議長が主宰する勉強会には、前回の七十四人を大きく上回る衆参合わせて九十六人が出席。昨年暮れ八人で始まった会合は旧橋本派、亀井派などから参加者が増え、五回目の今回は初めて副大臣が参加、政務官四人も姿を見せました。
ただし、反対といっても出席者の意識はまちまちで、(1)民営化断固反対の郵政族グループ(2)これをテコに反小泉で政局打開を狙う勢力(3)選挙区事情等から様子見の中堅・若手―などに大別されそう。このうち荒井広幸参院議員ら(1)の勢力はむしろ少数で、大半は様子見とみられています。
それでも首相らが過敏になるのは、単純計算で衆院で四十四人、参院では十八人が与党から反対に回れば、法案は不成立になるため。しかも政府が四日に決めた法案の骨格で、郵便局の全国一律配置の義務付けなどの“妥協”をしたため、「それなら現行の手直しの方がまし」と、日本郵政公社法の改正案提出の動きも出ています。
◆突発事態
そんな折、突然起こったのが竹中平蔵郵政民営化担当相の「多忙」を理由にした衆院総務委員会への欠席問題(五日)です。衆院本会議で「陳謝」したものの野党は国会審議の軽視と批判。民主党は、急に“対決色”を強め八日、衆院内閣委から全委員を引き揚げ、対応いかんでは週明け、衆院の全委員会審議にも応じない構えです。
この問題では、麻生太郎総務相が「少なくとも(委員会に)呼ばれたら行かねばならん。忙しかったからでは通らない」(八日)と竹中氏をチクリ。自民党幹部は、「万一、野党から大臣不信任案でも出されたら、民営化反対派が同調するかもしれず、そうなれば突発的解散などの事態も起こりかねない」と“火消し”にやっきです。
他方、公明党は、民主党の態度を「理由なき抵抗」と決めつけ、政権準備政党ならぬ「政権願望政党だ」(国対幹部)などと批判。東京都議選への影響を恐れ、郵政問題の「早期決着」を求めています。
この間出された反対派の意見は、過疎地の金融サービス維持への懸念や、「外資による敵対的買収を防げるのか」と、国民の財産を食い荒らすことへの疑問・不満などなど。同時に、「内閣が決め、党に押し付ける」小泉流政治手法への反発が噴出しています。
◆国民不在
首相の“後見人”役の青木幹雄参院議員会長が、集約作業を前に「感情的な対立を打開する努力を」と首相に注文を付けたのも、そうした現状を踏まえてのことでした。
一方、もう一人の“後見人”森喜朗前首相は、政局混迷は何としても避けたいと、「法案成立を花道に首相の円満退陣、後継の暫定内閣構想」(同派幹部)を模索するなどしたものの、今のところ進展は見られません。
郵政民営化は、国民サービスを引き下げ、三百五十兆円もの資産を米国や日本の大企業に明け渡すもの。だからこそ「国民の関心度は2%程度。これで解散したら笑われる」(加藤紘一元幹事長)との意見もあります。
ともあれ、政府と自民党反対派の郵政問題政局は、国民不在のまま「解散風」をもはらんで、ヤマ場にさしかかります。(梁)