2005年4月12日(火)「しんぶん赤旗」
介護保険改悪法案 これから勝負どころ
政府の矛盾が浮き彫り
衆院議員(厚生労働委員)山口富男さんにきく
介護保険改悪法案をめぐる国会の状況とたたかいについて、日本共産党の山口富男衆院議員(厚生労働委員)に聞きました。
当初、与党側は四月十五日までに衆院の委員会で、なんとか介護保険改悪法案を通そうとしていました。
私は、五年目の義務的な見直しであり、「徹底した審議が必要だ。参考人質疑をおこない、公聴会も開くべきだ」と主張しました。
その結果、参考人質疑は十二日、地方公聴会は十八日に高知で開くことになりました。今は、二十日、二十二日での採決の線が出てきています。
そんなはずない
今度の介護保険改悪の一つの柱は、「新予防給付」の創設です。要支援と要介護1の軽度要介護者のホームヘルパーやデイサービスの利用を制限するわけですが、それがどれくらいの規模の人になるかは、大変な問題です。政府側は、当初「言えません」という対応でしたが、とうとう大臣が、「百五十万から百六十万人だ」と示しました。
次の問題は、家事代行型の訪問介護は原則おこなわないとしたことです。理由は、「ヘルパーが家事代行をすれば軽度の介護者が重くなる」というのです。「そんなばかなこと」はないと論戦になりました。
厚労省自身の資料でも、介護の認定の軽い方がヘルパーさんに助けられて状態を維持したり改善する率が高いことを示して追及すると、政府側も否定しきれなくなりました。
「介護で掃除や洗濯や調理や、どれも欠かせない。いったい何を削るんだ」と私が問い詰めると、ひとつも明らかにできないで“介護を認定しプランをつくるときに決まる。早くても来年の四月”というのです。
これらが、一巡目の論戦でした。
二巡目の論戦では、介護施設の入所者一人あたりの負担増が焦点となりました。
負担増を認める
政府も、単純計算したら年間、一人当たり三十九万円の負担増になりますと初めて認めました。
保険料は五段階が六段階になりますが、これは市町村の税金と連動しています。小泉内閣の増税措置で、税金のかかる部分がかさ上げされてしまいます。そのため負担増への軽減措置の対象からはずれる人が出てしまいます。これも質問し、「激変緩和措置を取る」と答弁を引きだしました。
地域支援事業の再編成も問題です。六十五歳以上の人の介護マネージメントに対応するのが「地域包括支援センター」です。ところが、そこで予防給付のケアプランを作るのは保健師か看護師一人で三百二十人分になるのです。
「今でも五十人は多い、三十人程度にすると政府はいいながら、新予防給付は三百二十人。できるはずない」という論戦をやって相手も立ち往生になったわけです。
なぜ、このような無責任で矛盾したことを政府が持ち出したのかというと、二〇一五年に介護の予算を一割から二割削るという目標があるからです。
そのため、サービスを削り、負担を増やす、介護報酬を見直し、ヘルパーの収入も減らすというムチャクチャな提案になってきているのです。
こうした論戦のなかで、そう簡単に通すわけにはいかないということになったのです。介護労働者の問題はまだ、本格的には取り上げられていません。私は次に質問する予定です。
労働条件確保を
既に政府の文書でも、介護労働者のさまざまな労働条件について改善しなければならないと言っていますが、今度の法案には盛り込まれていません。
今度の介護保険の見直しの出発点になった社会保障審議会介護保険部会では、「質の高い人材の確保、養成のためには、適切な労働条件の確保が不可欠。ホームヘルパーは直行、直帰型なので情報共有や技術蓄積が困難でチームケアが成り立ちにくくなっている。これは改善しなければいけない」という意見をあげています。
厚労省が「昨年八月に介護労働者の労働条件の改善、労働時間の管理をせよ」と通達を出しましたが、その徹底はこれからです。
国会論戦のなかで介護保険見直しの問題点が浮き彫りになり、批判の世論も強まってきています。介護保険改悪を許さないために宣伝や署名活動を大きく広げることが求められています。たたかいは、これからが勝負どころです。