2005年4月15日(金)「しんぶん赤旗」
介護保険改悪法案
家事援助廃止は打撃
衆院委で参考人質疑
利用者不在に批判や不安
「利用者不在だ」。十二日の衆院厚生労働委員会で行われた介護保険改悪法案の参考人質疑は、厚労省が法案の柱としている見直し点にたいし不安や批判の意見が続出しました。 (山岸嘉昭)
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現行制度を大きく変える、軽度者を対象にした「新予防給付」の導入が批判の的になりました。
介護保険は、介護が必要と認定された高齢者にたいし事業者がサービスを提供する仕組みです。法案は、利用者のうち予防が必要な軽度者を切り離し、新しい在宅サービス(新予防給付)の提供を口実に給付を抑えようというねらいです。対象となる軽度者は、現行認定ランクのうち「要支援」のすべて、「要介護1」の七―八割、合計で百五十万―百六十万人に及びます。
歩いてる人のつえ奪うのか
城西国際大の服部万里子教授は、現行の要支援、要介護1の46・1%が一人暮らしの高齢者となっており、利用しているサービスの44・5%はヘルパーなどがおこなう訪問介護というデータを紹介。サービスによる改善効果調査や利用者の声もまじえ、法案に含まれている“訪問介護のうち家事サービス(生活援助)の原則廃止”方針が実態と合わないことを強調しました。「生活援助をとることは、歩いている人のつえをとってしまう結果を招くのではないか。一律に利用を抑制する考え方は、見直してほしい」とのべました。
中央社会保障推進協議会の相野谷安孝事務局次長は、法案の前提にある厚労省の「給付見通し」をもとに新予防給付の削減額を試算。「『新予防給付』は従来のサービスの半分以下にならざるをえない」とのべ、財政の論理を先行させた改革は白紙に戻してほしいと訴えました。
施設の負担増試算を超える
施設入所者の居住費、食費を全額自己負担とする見直しを支持した参考人は少数です。
今国会で強行された税制「改正」の影響で、負担増は厚労省の説明を超えると試算(図参照)を示したのは、労働者住民医療機関連絡会幹事の池尻成二氏。住民税非課税だった人が課税になり、「低所得者対策」から締め出されるためです。
池尻氏によると、年二百万五千円の年金収入の場合、特別養護老人ホームの相部屋利用は、これまで月四万円だった負担額が八万七千円に、ユニット型個室利用者は月七万―八万円から十三万四千円になります。いずれも厚労省の説明より月三万―四万円多い負担増額です。「厚労省は税制『改正』の影響を無視してきた」と批判しました。
日本医師会の野中博常任理事は「居住費、食費の負担を強いることは、社会保障制度の本来の姿として不適切だ」と強調しました。
「予防プラン」作成は不可能
新しい予防サービスを受けるための利用プランをつくる組織として、「地域包括支援センター」を市町村に設置することも大きな制度変更です。厚労省は法案審議で、設置数は五千―六千カ所と明らかにしました。参考人からは疑問の声があがりました。
服部城西国際大教授は、支援センターでプランを作成することになる保健師は全国で三万八千三百五十人で、百五十万―百六十万の軽度者のプランをつくるのは「人数的に不可能」と問題提起。厚労省は「ケアマネジャーに委託できる」というが、その場合もプラン作成の指示と決定、評価は保健師が行うことが厚労省の文書で明記されていると明らかにしました。