2005年4月16日(土)「しんぶん赤旗」
ガソリン120円台突破
業者・ドライバーに痛手
自腹切って きたが…
ガソリン価格が高騰し、ドライバー、中小業者らの経営を直撃しています。ガソリン小売価格は今月、約十年ぶりに百二十円台を突破する店が続出しています。業界内では「百三十―百四十円近くなる」という声も上がるほどの異常事態です。(芦川章子)
値上げ踏切り
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「一円でも安いところで、というのがお客さんの本音ですから、卸値が上がったからといって価格に転嫁できるものではありません。その分はうちがかぶらざるを得ない」。さいたま市内のガソリンスタンドでマネジャーをする松井賢一さん(38)は肩を落とします。
石油元売り大手四社は四月から系列給油所向けのガソリン卸価格を前月比で一リットルあたり四・八円―五・一円引き上げました。湾岸危機(一九九〇年)当時につぐ大幅な値上げです。
松井さんは「今まで値上げせずにやってきましたが、もう、どうしようもない」と四月から七円の値上げに踏み切りました。価格競争がつづくガソリンスタンド。赤字からつぶれる業者も後を絶ちません。
軽油も上がる
価格高騰は、中小の運送業者にも痛手を与えています。
山中平四郎さん(56)は東京・足立区で運送業を経営しています。五台の大型ダンプカー、四人の従業員を抱えています。
ダンプに使う軽油も高騰。軽油代は、元請けから受けとる売上金の三分の一ほどです。
「もう、とっくに限界だよ。燃料が上がったからって元請けに請求できるわけがない。自分の懐が痛むだけ。このまま値上がりしつづけたら、白旗をあげるしかないね」。日に焼けた顔で、力なく笑います。
一カ月、目いっぱい働いて得られる給料は、一般会社員の初任給なみ。そこから年金や健康保険料を引いた金額で家族を養っています。本業のかたわら工事現場の仕事などをし、従業員の給料や会社運営にあてています。
営業をつづけるには車の管理費や、買い換え資金も必要です。家族のことを考え、運転資金として借りた金を返すために生命保険金をあてに自ら命を絶った仲間もいるといいます。
マネーゲーム
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ガソリン価格を押し上げている理由に、原油の高騰があります。
原油高騰の背景について石油業界関係者は、石油取引を舞台にした「マネーゲームの過熱」があるといいます。イラク戦争によって中東情勢が不安定化。そこへ、ヘッジファンド(国際投機集団)がつけこみ原油価格をつりあげているといいます。米ブッシュ政権は「戦争への蓄え」を優先し、石油備蓄の切り崩しには否定的です。投機資金を規制するつもりもありません。
埼玉県川口市の運送会社で経営に携わりながらドライバーをつとめる男性(33)はいいます。
「なぜ僕らのような、食べていくのに精いっぱいの中小業者までもがマネーゲームの中に放りこまれるのか。被害をうけるのはいつだって現場の労働者。無理に働くから事故も起きる。納得いかない。こんな投機行為を野放しにしていいのでしょうか」