2005年4月17日(日)「しんぶん赤旗」
維持・改善「半分以下」 実は「84%」
政府の宣伝何だったの
ヘルパー・ケアマネ かんかん
在宅サービスを一年間継続利用している軽度(要介護1)のお年寄りの84%が状態の「維持・改善」を保っている―。厚生労働省が日本共産党の山口富男衆院議員に示した統計調査で、こうした実態がわかり、介護保険改悪法案による軽度者のサービス制限の理屈がいよいよ成り立たなくなりました。これまで一部の調査から“状態の維持・改善につながっていない”と宣伝してきた厚労省。関係者から「意図的な情報操作だった」「法案は見直すべきだ」との声があがっています。
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厚労省がパンフレットなどでさかんに引用し、都道府県にも流してきたのが日医総研による七千八百七十八人を対象にした島根県下の調査。要支援の48・9%、要介護1の34・8%が重度化していました。しかしこれ自体、在宅に比べて軽度者の悪化割合が高い施設入所者のデータを混ぜたものでした。
ところが厚労省が山口議員に示した介護給付費実態調査報告(二〇〇三年度)にもとづく資料は、一年間継続して在宅サービスを利用した百三十八万六千二百人の調査。ここで要介護1の八割以上が「維持・改善」していることが明らかになりました。
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■違和感
「厚労省が山口議員の求めで出した調査は決定的。改悪法案の根拠が大きく崩れたのではないでしょうか。自分の都合のいい調査だけを使って見直しの議論を進めてきた厚労省のやり方はおかしいですね」。こう語るのはホームヘルパー全国連絡会の三輪道子代表。
島根県下の調査を使った“軽度者のサービスが状態の維持・改善につながっていない”とする厚労省の説明に、「私たちの援助が役立っていないなんて、そんなはずはない」と違和感を覚えたという三輪さん。昨夏、自ら働く京都市内の事業所に調査を依頼しました。すると要介護1の78・4%が「維持・改善」でした。
「今回の調査結果は私たちの実感通りです。逆に、軽度の方から訪問介護などの介護サービスを取り上げたら、十分な食事もできなくなり、重度化することは明らか」といいます。三輪さんは「軽度者には介護サービスを提供し、自立の方を中心に予防の事業をすすめるべきでは。この調査が明らかになった以上、法案は再検討が必要ではないでしょうか」と。
■廃案に
十六日、都内で開かれた「第二回介護フォーラム これでいいのか介護保険!」。東京民医連の鈴木篤会長が、山口質問で明らかになった厚労省調査を紹介すると会場からは「エー」との声が。
「島根の調査で、ケアマネが悪いかのようにいわれてきました。あれはなんだったの?」。いぶかるのは千葉県野田市のケアマネジャー・五十嵐きよみさんです。
行政などが開くケアマネジャーの研修ではきまって島根調査が示されたといいます。「ケアマネが軽度者に不必要な訪問介護やデイサービスを組んでいるから状態が悪化する、保険のムダ遣いとまでいわれました。その根拠がいいかげんだったなんて」と怒りました。
都内のケアマネジャー大葉清隆さんも、都のセミナーで介護保険課長が島根調査を引用し「軽度者が悪化している」と講演したのを聞きました。「給付費抑制のシナリオに都合のいい調査を使っていたのでしょう。こんなでたらめなやり方はやめるべきだ。法案は廃案にするしかない」と語っていました。