2005年4月25日(月)「しんぶん赤旗」
主張
介護保険改悪法案
憲法の生存権の視点にたって
衆院で審議中の介護保険改悪法案について、政府・与党が連休前の衆院通過をねらっています。
根本から審議やり直せ
法案は、施設入所者とショートステイ・デイサービスの利用者に新たに部屋代・食費を負担させます。負担増総額は年三千億円で「現在の施設入所者七十七万人で割り算すると一人約三十九万円」と、政府は答弁しています。
また、「新予防給付」を創設し、筋力向上のトレーニングや栄養改善指導、口腔(こうくう)ケアなどを行う一方、訪問介護やデイサービスの利用を制限します。対象は、現在要支援と要介護1の認定を受けている人の約七、八割にあたる百五十万―百六十万人です。
負担増とサービス抑制を柱にした法案に、参考人質疑でも「いったん白紙に戻し、根本的な議論からやり直してほしい」との声が出されました。
介護保険制度は、年金や医療とならぶ社会保障制度の柱です。
社会保障とは、憲法二五条が規定する生存権をふまえ、すべての国民に生きていくために必要な給付を保障し、負担は所得や資産などの負担能力に応じて求める――。これが原則です。
国会の審議で、政府は、要支援や要介護1の人が受けているサービスで、何を不必要とするのか具体例をあげることはできませんでした。実際には、要介護1で在宅サービスを受けている人の84%が、状態を「維持・改善」させています。
それにもかかわらず、百六十万人の訪問介護やデイサービスを削減するとしたら、憲法で保障された生存権との関係はどうなるのか。審議は尽くされていません。
部屋代・食費の負担増も、生存権保障の視点が必要です。参考人の日本医師会の代表は、「疾病や障害を抱えた人は受難者です。制度効率化の美名のもと、受難者に居住費や食費の負担を強いることは社会保障制度の本来の姿としては不適切と考えております」とのべました。
政府は、低所得者対策をとるとしています。しかし、今国会で成立した税制改悪の影響で、住民税非課税だった人が課税になり、低所得者対策から締め出されます。日本共産党の山口富男衆院議員の質問に、政府も「激変緩和措置を取る」と答えました。
もともと、利用者の一割負担は低所得者に重い負担となる制度です。加えて部屋代と食費を保険給付から外して定額で利用者負担にすれば、いっそう低所得者をいじめることになります。
施設でも在宅でも安心して介護が受けられるようにするために、所得などに応じた負担に改めていく必要があります。
効果が不明な予防給付
介護予防について、厚生労働省は効果が明確なサービスを導入するとしています。しかし、市町村で先行実施しているモデル事業の中間報告では、筋力トレーニングを実施した結果、「身体の痛み」や「心の健康(ゆううつ)」などの項目で悪化した人が二―三割もいました。効果が明確なサービスだと認定することはできません。
政府は、介護保険制度で介護の社会化をめざすといってきました。しかし法案はサービス費用の抑制を図ることを目的につくられています。生存権とその保障のための国の責任をうたった憲法二五条の視点にたって、安心して介護が受けられるようにしなければなりません。