2005年4月25日(月)「しんぶん赤旗」
介護保険法案破たん深刻
家事サービスはデータ操作で廃止
筋トレはデータ不備でも導入急ぐ
衆院厚生労働委員会で審議中の介護保険法案の破たんが深刻です。とくに見直しの目玉だった「新予防給付」導入を裏付けるはずの調査データの欠陥が次々と発覚。法案提出のやり直しさえ必要になっている状況にもかかわらず、与党は連休前の衆院通過をねらっています。
【家事サービス】
政府に都合のいいデータ操作が行われたのではと疑惑が深まっているのが、家事サービスの廃止方針です。
“サービスを利用しても状態がよくならず悪くなっている”“本人がやれるのにヘルパーが漫然と代行している”。厚労省が、調理、掃除、買い物、洗濯などの家事サービスは「原則廃止」とした理由です。影響を受ける在宅の軽度者(六十五歳以上、認定ランクは要支援と要介護1)は約百六十万人にもなります。
この根拠となった調査が、日医総研の調査研究。島根県内の一部地域の高齢者の介護状態を二〇〇〇年十月と〇二年十月の変化を見たものです。軽度者の状態変化は、要支援の48・9%が重度化し、維持の32・4%を上回ります。要介護1でも重度化が34・8%で三分の一以上、維持・改善は45・7%でやや上回る程度です。
法案提出後も厚労省はこの資料を使って、家事サービスの効果は小さいと、“廃止”の裏付けとしていました。
ところが日本共産党の山口富男議員の要求で提出された厚労省「介護給付費実態調査」(〇三年度)では、正反対の結果が出ていたのです。
要支援の維持は68・8%で、日医総研資料の倍以上の効果を示していました。要介護1の維持・改善は84・4%で、これも一・八倍と倍近い効果です。軽度者の利用する在宅サービスの効果を実証するものでした。厚労省がサービス制限に都合のいい調査を示し、意図的にデータを操作していたことは明白です。
【筋トレ】
一方、みずから推奨してきた筋力トレーニングはデータもそろわないまま導入を決めようとしています。
筋トレは新しい予防給付として導入されるサービスです。目玉商品として厚労省は市町村でモデル事業を実施してきました。その結果が「中間報告」としてまとまったのは四月十九日。自民党が法案採決を提案した、その日にようやく提出してきたものです。
それも野党の追及をうけ、審議を何度も中断しながら応じたものです。しかも六十九市町村(内筋トレは五十一)で実施しながら、集計できたのは四十八市町村(同四十四)です。
集計結果を見ても、筋トレをした人の16・3%が悪化(一次判定)していました。項目別の内訳では「身体の痛み」で25・8%が悪化し、「全体的健康感」で悪化した人が30・8%にのぼります。しかも、鼻血をだした、痛みが強くなったとして中断する高齢者が続出しています。
西博義厚労副大臣(公明党)も、今後の実施にむけ「緊急時の体制の確保等が安全面としては大事なことだ」(二十日、衆院厚生労働委員会)と答弁するほど細心の注意が必要なサービスです。
山口議員の追及に尾辻秀久厚労相も「効果が明確」とはいえず、「効果を示唆する方向が認められた」と答えただけでした(二十二日)。サービス効果の検証で多くの課題が残されたまま筋トレ導入を強行しようとしています。