2005年4月26日(火)「しんぶん赤旗」
主張
日米の税制論議
「消費税頼み」の忘れもの
小泉内閣と米ブッシュ政権が、日本とアメリカの双方で消費税頼みの税制論議を進めています。
小泉「構造改革」の推進本部に当たる経済財政諮問会議は、「日本21世紀ビジョン」をとりまとめました。これを小泉首相は改革の「バイブル(聖典)」と呼んでいます。
この中で、諮問会議としては初めて、消費税率の引き上げを明示した財政見通しを明らかにしました。数年内に「5+α%」に増税することを想定しています。公共サービスの水準を維持する場合、将来は「二桁(けた)の消費税率を含む国民負担となる」とのべています。
アメリカ発の増税論
アメリカでは、州には消費税に似た小売売上税がありますが、連邦にはありません。ブッシュ政権は、米史上初となる全国規模での消費税導入をめざしています。
ブッシュ政権一期目の金持ち減税で税収が落ち込んでいます。これにイラク戦費の累増がかぶさって、二〇〇五年度の財政赤字は四十兆円を大幅に超える見込みです。
二期目の政権は金持ち減税を恒久化しようとしています。膨らむ財政赤字を福祉の削減や消費税の導入で埋め合わせようという算段です。
米連邦準備制度理事会のグリーンスパン議長が導入賛成を表明しました。反対の声も上がっています。消費税は「貧しい人に最も重くのしかかり、富める者の負担は小さい」(ミネソタ・デーリー紙の社説)。
日米政府が呼応し合うように消費税を議論するのは今回が初めてではありません。米政権が消費税導入を検討すると、相前後して日本の政権が消費税導入・増税を打ち出すということが繰り返されています。
一九七〇年代の末に大平内閣が「一般消費税」を提案。その前にニクソン政権やカーター政権が消費税の導入を議論しています。
八〇年代の後半に中曽根内閣が持ち出した「売上税」、竹下内閣が強行した現行の「消費税」。これに先立ってレーガン政権が消費税導入を検討しました。村山内閣が決め、橋本内閣が実行した消費税の5%への増税。やはり、クリントン政権が消費税を検討しています。
単なる偶然ではありません。アメリカは軍事や経済の曲がり角に立つたびに、みずからの戦略や経済政策を補完するため、軍拡や財政出動、構造改革など日本への要求と圧力を強めてきました。歳入面でのしわよせが、日米双方で消費税問題として噴出しています。
「公平の原則」に反する
見逃せないのは、これまでアメリカが消費税を採用してこなかった事実です。その最大の理由は、消費税が、税制の原則の中で最も大切な「公平の原則」を踏みにじる税制だということです。
とりわけ、大規模な税制改革を実施したレーガン政権での議論は重要です。消費税をつぶさに検討したアメリカ財務省が、八四年に膨大な報告をまとめています。
米財務省の報告は消費税の逆進性に注目しています。逆進性には「貧困レベル以下の人々に対する租税の絶対的負担」と、「それより上の層に対する逆進的な効果」の二つの面がある。「分配上の不公平をもたらすという理由から、財務省はこれ(消費税導入)には反対である」
日米ともに税制の民主主義の原点に立ち返る必要があります。それを忘れて、社会保障の財源を、弱い立場の人ほど負担が重い、不公平な消費税で賄おうという小泉内閣と自公民の議論は本末転倒です。