2005年4月28日(木)「しんぶん赤旗」
主張
郵政民営化法案
改めて問われる「何のため」
小泉内閣が郵政民営化法案を閣議で決めました。郵政事業を郵便局、郵便、郵貯、保険(簡保)の四社に分割し、持ち株会社のもとで株式会社化します。
世論調査をみても郵政民営化を急いでほしいという人はわずかです。
自民党内からも「なぜ民営化なのか」「公社ではなぜいけないのか」と、民営化の「そもそも」にかかわる反対論が噴出しています。
地域社会にかけがえのない郵便局は存続できるのか。民営化で国民向けのサービスはどうなるのか。国民の不安には「ゼロ回答」です。
郵便局網をずたずたに
政府と自民党執行部との協議で法案が「修正」され、「骨抜き」になったかのような報道もあります。しかし、閣議決定された法案には、小泉内閣が昨年九月に決めた「基本方針」が貫かれています。全国の郵便局網をずたずたにする内容です。
郵貯会社と保険会社の株式は完全売却を義務付けています。
自民党執行部は、持ち株会社がその株式を買い戻すことで、郵便局と郵便、郵貯、保険の一体運営を維持できるかのように描いています。
赤字になれば郵貯、保険の撤退は必至です。赤字を出しても郵貯・保険会社を郵便局にとどめることは、五割以上の株式を所有して子会社にでもしないかぎり無理な話です。巨額の資金も必要になります。
「社会・地域貢献基金」を創設し、これで過疎地のサービスを維持するとしています。
この基金の積立金の規模を一兆円にするか二兆円に上積みするかが、政府と自民党の協議の焦点になりました。ところが、一兆円でも二兆円でも、不採算地域の郵便局の赤字を埋めることは不可能だということが、日本共産党の塩川鉄也衆院議員の試算ではっきりしています。
基金は積立金の運用益を郵便局会社・郵便会社に交付する仕組みです。積立金が一兆円の場合、運用益は百二十億円となり、六百万円ずつ二千局に交付する規模です。二兆円なら運用益は三百億円で、同じく一局当たり六百万円を五千局に交付する規模になります。
赤字を余儀なくされている郵便局は一万一千を超え、赤字額の平均は一局当たり一千万円以上です。一兆円や二兆円の基金では、どうにもなりません。
何より、民営化するということは、事業を市場の論理にゆだねるということです。民間企業の論理に従えば、収支トントンでは事業を維持できません。利益が出なければ撤退します。必要な交付金は、ますます膨れ上がります。
銀行とアメリカの要求
いまの郵政には郵便、郵貯、簡保の全国共通サービスが義務付けられています。だから、全国の黒字郵便局の黒字で全国の赤字郵便局の赤字を補てんできています。税金も一切投入されていません。
郵政事業をわざわざ民営化し、郵貯・簡保の株式を完全売却した後に巨額の資金を投入して買い戻し、兆円規模の基金を創設するうえ、郵便局網を破壊する―。壮大なムダというほかありません。
郵政民営化法案は、多くの地域で郵便局を統廃合に追い込む枠組みとなっています。この点で、ムダな高速道路を造り続ける「妥協」の産物となった、道路公団民営化とは大きな違いがあります。
郵政民営化は金融業界とアメリカの要求です。ここまで小泉内閣が強硬な理由も国民にまともな説明ができないわけも、根っこは一つです。