2005年4月28日(木)「しんぶん赤旗」
介護保険改悪 審議で根拠崩れる
給付削減優先の「予防重視」
利用者に広がる不安
二十七日に衆院厚生労働委員会で可決された介護保険改悪法案は、政府側の主張してきた見直しの根拠が完全にくずれたことが審議で明白になりました。
二〇〇〇年四月にスタートした介護保険は五年ごとの制度見直しが義務付けられ、今回が最初の見直し。“サービス面の充実”として厚生労働省が盛り込んだのは「予防重視」です。本来なら期待が広がるはずですが、肝心の介護現場・利用者に広がったのは不安と心配、渦巻く批判でした。調理、掃除、洗濯、買い物などの家事サービスの“原則廃止”方針がだされたからです。
廃止の“論理”はこうです。この間、軽度の介護状態の人が特に増えたが、サービスを利用しているのに状態が悪化したという調査結果がでている、悪化の原因は家事サービスにある、だから家事サービスを適正化する新しい予防サービス(新予防給付)を導入する―。厚労省はこれを「予防重視」の根拠づけにしました。
山口質問で決着
このことが法案の対決点となり質問が集中。政府側は、家事サービスが役立っている実例を示されると「評価している」(尾辻秀久厚労相)といわざるをえなくなりました。「新予防給付の導入がこれほど問題になるとは思わなかった。冷や冷やの答弁だった」と政府関係者がもらすほど。答弁席の尾辻厚労相に厚生官僚がべったり張りつき防戦一方となりました。日本共産党の山口富男議員が示した、在宅サービスを利用している軽度者(要介護1)の84%が状態を「改善・維持」していたという厚生労働省調査が論戦に決着をつけました。
審議で厚生労働省は、家事サービスで不適切な事例は「一部」で、大部分は「適切」とも答弁。一部の不適切な事例をもって、家事サービス廃止方針を打ち出したことが浮かびあがりました。家事サービス廃止を「原則」とする理由は審議を通じてすべてなくなったなかでの採決強行は、与党の横暴そのものです。
負担増が明確に
「予防重視」のもう一つの看板だった筋力トレーニングも、厚労省のモデル事業調査(中間報告)で「明確な効果」を裏付けることはできませんでした。
政府側の見直し根拠が破たんする中で、逆に明確になったのは給付減・負担増のねらいです。
家事サービスでは、「不適切な利用」を口実にサービス利用計画(ケアプラン)の作成段階で給付抑制の締め付けを強めていく考えです。
施設サービスでは居住費、食費の全額自己負担化(ホテルコスト負担)で大幅な自己負担増を押し付け、課税世帯の利用者負担は実質三割負担を求めることになります。低所得者への負担増は「激変緩和措置」さえ必要になる大負担増法案であることが明らかになりました。
民主「修正」で自公に同調
負担増につながる範囲拡大
破たんした介護法案にもかかわらず、民主党は「修正」協議をテコに与党のねらいどおり連休前の委員会採決を容認し、党内の反対論を封じて賛成に回りました。
徴収年齢引下げ
「修正」として盛り込まれたのは、「新予防給付」の三年をめどにした「検討」条項です。三年後といえば、市町村の介護保険の事業計画の次期見直し時期にあたり、「新予防給付」がうまくいっているかどうか検討されることは当然予定されます。審議でその不当性が明らかになった家事サービス廃止方針を撤回するものでも、また厚生労働省による廃止圧力の歯止めになる「修正」でもなんでもありません。
民主党はさらに自公両与党との共同提案の付帯決議に、介護保険の対象年令について「範囲の拡大を含めて検討を行う」と盛り込ませました。
「範囲拡大」は、厚生労働省がサービス利用年齢(現行は六十五歳以上が基本、一部四十歳以上)の引き下げ(普遍化)を名目に、財源確保策として現行四十歳からとなっている保険料徴収年齢の引き下げ(二十歳以上)をねらっているものです。法案(付則)では、賛否両論をふまえて、受給範囲の検討をうたっています。決議は、範囲の「拡大」の表現を入れることで、厚労省のねらう保険料負担増を督励することになり、国民にとっては「修正」どころか法案をさらに改悪するものでしかありません。
法案審議で「新予防給付」の破たんが明らかになるなかで民主党は、採決直前まで「一言でいえば給付をカットして負担を増やすということですから、小泉内閣が一貫してとってきた政策の一つ」「カットの方に先に目がいっている」(横路孝弘衆院議員)と批判。採決当日の質問でさえ、「家事サービスで悪化。バカなこといいなさんな」(五島正規議員)とのべていました。
政権準備政党だ
新予防給付の問題点を百も承知で三年後の「見直し」規定で賛成。給付削減・負担増のねらいもわかっていて賛成。二大政党制によるオール与党化が暮らしの問題でもあらわれたものです。民主党議員の一人は、「政権準備政党だからね。仕方ない」ともらしました。(斉藤亜津紫)