2005年4月30日(土)「しんぶん赤旗」
郵政民営化 株式持ち合い
的外れの思い込み?
郵政民営化をめぐる政府と自民党の「修正」のドタバタ劇で主要なテーマになったのが株式持ち合いの問題でした。
郵政公社がたとえ分社化されても、株式を相互に持ち合うことで、一体的経営を実現し全国一律サービスの継続をはかるという発想です。新設される郵貯会社と簡保会社の金融二社の株式をいったん完全に売却するものの、ふたたび証券市場から買い戻すという案が出てきました。
小泉首相の裁定で決定した法案骨子はこの問題を「一体的経営に対する配慮」と麗々しく取り上げました。民営化後の株式持ち合いについては「経営判断により他の民間金融機関と同様な株式持ち合いを可能とする」と配慮したかのような表現を使いました。
自民党執行部は政府にさらなる「譲歩」を迫り、株式の持ち合いの結果、「株式の連続的保有が生じることを妨げない」との合意文書を取り付けました。自民党執行部が政府の「譲歩」を勝ち取ったかのように報道もされました。
ところが、株式の持ち合いについては、さまざまな法的規制があります。なかでも独占禁止法が問題になります。
民営化で新設されるのは郵貯、簡保の金融二社以外に、持ち株会社である日本郵政会社(政府が株式の三分の一を保有)、郵便事業を行う郵便事業会社、窓口ネットワーク会社である郵便局会社の三社です。三社による金融二社の株式保有によって、グループ経営を行うためには、実効性のある株式保有が必要になります。
ところが、この三社グループが郵貯と簡保の金融二社を実質子会社にすることは独占禁止法に抵触します。ここでいう実質子会社化は、株式の25%超の議決権を保有することです。郵政会社の三社グループが金融二社を実質子会社にすることは、同法が禁止している「事業支配力が過度に集中することとなる会社」にあてはまるからです。
株式保有を通じたグループ経営で、金融二社に全国一律サービスを強制することは最初から不可能だったのです。経営に影響を与えない株式を保有しても意味はありません。いくばくかの株式保有で一体的経営が可能になると自民党執行部が思い込んだとしたら、こっけいです。
商業メディアなどは、民営化が「骨抜きになった」などと報道していますが的外れな議論です。
分社化による郵貯、簡保の弱体化、全国一律サービスの解体方針は、昨年九月に政府が決めた「基本方針」から、なんら修正されていません。(金子豊弘)