2005年5月3日(火)「しんぶん赤旗」

検証 国会の“オール与党”〈4〉

介護保険改悪

論戦より“政権準備”


 介護保険改悪法案の採決が行われた四月二十七日の衆院厚生労働委員会。民主党は、自民・公明といっしょに賛成に起立しました。しかし、同委員会所属の民主党議員は採決の後、こう打ち明けました。

党内は反対多数

 「実を言えば党内では反対が多数。NC(ネクストキャビネット=民主党の次期閣僚候補)のなかでも反対が多い」

 賛成することが党の態度として決まったのも採決の前日ギリギリ。厚労委に所属していない別の民主党議員は、「えっ、賛成なんて聞いてない。財政的観点だけで人権保障の観点が何もない法案だ。とても賛成できないはず」と驚きました。

 「その通り」「いい質問だ」

 厚労委の審議で、同法案をめぐる政府の説明の矛盾、でたらめぶりを鋭くついた日本共産党の山口富男議員に、毎回、民主党席から多くの声援が飛びました。

 介護保険改悪の最大の狙いは給付の抑制です。そのために軽度の要介護者には家事サービスの在宅介護を切り捨て、新しく介護予防サービスを導入し、要介護度が悪化するのを防ぐとして筋力トレーニングなどを行います。厚労委の審議ではこの介護予防と筋トレに質問が集中しました。

 「家事サービスを利用すると、ヘルパーに頼ってかえって高齢者の状態が悪化する」というのが政府の改定理由。山口議員はサービス利用の軽度者の八割が状態を維持・改善している事実を厚生労働省の調査で示し、政府の論拠をくずしました(四月一日)。

同じ論点で質問

 これを受け、四月六日の同委では、民主党の山井和則議員が、「前回、山口議員も指摘されたが…」と前置きして同じ論点で質問。政府案への厳しい批判で足並みをそろえました。

写真

介護保険法改悪案の審議を見守る傍聴者=4月27日、衆院厚生労働委

 筋トレの予防効果については、厚労省が全国で行ったモデル事業の結果報告を民主党議員が繰り返し要求。出された中間報告では筋トレで「鼻血が出た」「入院した」など状態悪化の例もあることが明らかになり、民主党が答弁を不満として審議が何度も中断する場面もありました。

 それなのになぜ採決では賛成なのか。「持続可能な制度」のためには介護給付の抑制が必要という点では、民主党も自民党と同じ考えだからです。

 当選一、二回の若手を中心に数では反対論が多いなか、最後は民主党のネクストキャビネット厚生労働大臣の横路孝弘議員に対応が一任されました。元北海道知事でもある横路氏と厚労委の筆頭理事の五島正規氏を中心に、わずかな修正とひきかえに賛成という道がしかれたのです。

「やめろやめろ」

 四月二十二日の衆院経済産業委員会でも不思議な場面がありました。

 審議のテーマは、破たんした核燃料サイクル再処理路線にしがみつく再処理積立金法案。日本共産党の塩川鉄也議員が「まともなロードマップも需給計画もないのにお金だけは積み上げる」と批判すると、民主党席からやんやの声援。しかし、民主党ベテラン議員が「やめろ、やめろ」と手ぶりで制止し、採決では自民、公明とともに、民主も賛成にまわりました。

 国会論戦で法案のひどさ、でたらめさがどんなに明らかになっても賛成する―。「政権準備政党だから仕方がない」で通るでしょうか。

 (つづく)


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