2005年5月7日(土)「しんぶん赤旗」
検証 国会の“オール与党”〈7〉
9条改憲
強引に“方向づけ”
自民、民主、公明の賛成で衆院憲法調査会の最終報告書が議決された四月十五日。自民党の船田元・同調査会筆頭幹事は「憲法見直し作業に向けて今後の指針となる内容だ」と発言しました。民主党の枝野幸男党憲法調査会長も、今後の調査会について「憲法改正手続き法制の整備の役割を担う第二ステップに進むことを期待する」とのべました。
最終報告書で改憲の方向付けはした、次は改憲の手続きを定める国民投票法案を成立させる、そのため調査会に新たに審議権を与える――連休明けに自民、民主、公明三党が進めようとしている段取りです。
国民世論と離れ
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五年間にわたった憲法調査会での調査。そこでの議論で自民、民主、公明の“改憲オール与党”は、憲法九条の改変を求め、平和を望む多くの国民の意思とはかけ離れたものになりました。それは、この間、地方と中央で開かれた公聴会を通じても示されました。
仙台市での地方公聴会では、十人の意見陳述人のうち六人が憲法擁護の立場を表明。宮城・鹿島台町の鹿野文永町長は、「憲法との出合いは暗夜に光明を見た思い」と語りました。沖縄、広島などの公聴会でも「憲法九条は二十一世紀の人類の針路を示すもの」(山内徳信・元沖縄県出納長)などの意見が出されました。
中央公聴会でも、改憲論の主張もある一方で、宮沢喜一元首相は「憲法は十分柔軟に書かれており、その運用によって国内外の変化に対応することができる」と陳述。武村正義元蔵相は、九条について「国連憲章の精神をわが国が世界に先駆けて立法化したものであり、これこそが日本の顔であり世界に示した旗。軽々しく変えてほしくない」と、評価したのです。
二項の改定へ
憲法調査会は、憲法に関する「広範かつ総合的調査」を目的に設置されたものです。その性格から、最終報告書は本来「調査の経過と結果」を記載するものでなければなりません(調査会規程)。
ところが、自民、民主、公明は、今国会での最終報告書づくりを、改憲への水路を開くものに仕立て上げようと執念を燃やしました。
衆院の最終報告書では、焦点の九条について「多数意見」として「自衛権及び自衛隊について何らかの憲法上の措置をとることを否定しない意見が多く述べられた」と、九条二項改定を方向づける内容を明記。憲法調査会を常設化し、国民投票法案の「起草及び審査権限」を与えるとの意見も強引に盛り込みました。
参院の最終報告書では、「五党の意見の一致」「三党の意見の一致」など、政党間の意見をすりあわせたかのような内容になりました。自民、民主、公明はまだ、改憲案づくりで党内議論の最中です。それで各党の「意見の一致」などと、どうしていえるのか――。
日本共産党の山口富男衆院議員、吉川春子、仁比聡平両参院議員は、調査会で改憲の方向づけに反対し、「憲法問題で問われていることは憲法を改変することではなく、憲法の諸原則と現代的意義を深くとらえ憲法を生かすことだ」(山口氏)と主張しました。
“改憲オール与党”と日本共産党の対決は、さらに激しさを増します。
(つづく)