2005年5月11日(水)「しんぶん赤旗」
介護法案 ポイントをみる
低所得者に上限というが…
年金超える負担額
施設の居住費と食費が全額利用者の自己負担(ホテルコスト負担)になると、負担額が受け取っている年金を超えてしまう人が出てきます。法案では、低所得者の負担を軽減するためとして、所得に応じた負担の上限額(三段階)を設定しています。(表)
たとえば、世帯の全員が住民税非課税の収入ランクで、受けとっている年金が年間八十万―二百六十六万円の人が、個室を利用したときです。この場合の負担の上限額は居住費で五万円、食費で二万円です。これに一割負担の二万五千円と合わせ、一カ月九万五千円の上限としています。これ以上は負担しなくてもよいということです。
しかし、現行の上限と比べると、月に二万円ほど引き上げられています。上限を設けたといっても、中身を見ると改悪されているのです。
それぞれの施設が、本来負担してほしいと設定している居住費(厚労省基準は個室月六万円)や食費(同四万八千円)と、負担の上限額との差額は、国が給付します。「補足給付」(特定入所者介護サービス費)とよばれています。補足給付を受けるには、市町村に申請して認定証(特定入所者認定証)を発行してもらう必要があります。
軽減にならず
上限は設けたといっても実態は軽減になっていません。年金が月七万円(年間八十四万円)、月八万円(年間九十六万円)の高齢者にすれば、九万円余という上限の負担額をそもそも払えません。個室から締め出され、相部屋(上限五万五千円)に入る選択しかありません。
審議で通用せず
厚労省は「低所得者に配慮」したといっていましたが、衆院審議で通用しなくなりました。このため年金が百万円余という低い所得の層にたいしては「現行の社会福祉法人による入所者負担軽減措置の運用を拡充することにより、きめ細かな対応を行う」(尾辻秀久厚労相)と答弁。特別養護老人ホームを運営している社会福祉法人による独自の軽減措置にたいする公的助成制度を拡充することになりました。
さらに住民税非課税を課税にしてしまう税制「改正」がおこなわれたため、介護保険の低所得者対策からはずされる人がでてきます。保険料が引き上げられ、それに連動して利用料が高くなります。
この問題で、「新たな軽減策を考えているのですか」(衆院厚労委、四月六日)とただす日本共産党の山口富男議員に、中村秀一老健局長は「激変緩和のあり方については検討させていただきたい」と答え、具体策をもりこむことになりました。(随時掲載)