2005年5月16日(月)「しんぶん赤旗」
郵政民営化・外交問題で討論
NHK「日曜討論」
市田書記局長が発言
日本共産党の市田忠義書記局長は十五日、NHK「日曜討論」に出演し、郵政民営化や外交問題で各党代表と討論しました。出席者は自民・武部勤、公明・冬柴鉄三、民主・川端達夫、社民・又市征治の各幹事長です。
■郵政民営化――350兆円の資金を狙う大銀行と生保・外資
自民、公明与党は「現時点で最もいい法案だ」(武部氏)、「修正は念頭にない」(冬柴氏)として郵政民営化法案の早期審議入りを主張。川端氏が「民業を圧迫するという本来の趣旨から外れ、そもそも民営化法案になっていない」とのべたのをうけ、市田氏は法案の三つの問題点を指摘しました。
全国網の維持成り立たない
市田 一つは郵便貯金を銀行と同じようにするという問題。ある雑誌で銀行の利便性のランキングが発表されましたが、郵貯が身近でサービスもよく手数料も取られずに一番いいと。銀行は例えば、百円玉を一円に両替するだけで大手銀行だと三百十五円の手数料ですよ。銀行と同じようにすればサービス低下につながるし、採算の取れないところは撤退していく。
二つめは郵便局の全国的なネットワークは維持するというが、これまでは公社の利益全体でまかなってきたのを基金を積み立て、株式の売却・運用益でまかなうというわけでしょう。ネットワーク維持が無理だから基金を積み立てるということ自身が、民営化すれば成り立たないと政府が認めているに等しい。
さらに郵便貯金銀行と簡保会社で株を売却するが、買い戻して一体経営も可能だと。これは、いま黒字の三事業を分割したら赤字になることが分かっているから一体経営を可能にしようと。分割民営化する根拠も必要性もまったくない。
郵政民営化の狙いについて、三百五十兆円の資金を民間部門に流れるようにするという政府・与党側の言い分に対し、川端氏は「国有の機関がさらに大きくなり、よけい官に流れるしくみだ」と主張。市田氏は次のように指摘しました。
民営化したら納付金は減る
市田 三百五十兆円を一番狙っているのは誰か。銀行協会会長が民間銀行に郵便貯金を渡せといっている。アメリカの対日規制緩和要求で郵政公社を民営化せよと、つまり外資が虎視眈々(たんたん)と狙っている。
民間に資金を回せというが、住宅金融公庫や中小企業金融公庫を廃止に追いやり、国民の「民」の方にはお金が回らない。大銀行と生保会社と外資が三百五十兆円を自由に使えるようにしようというのが、民営化法案の一番の本質です。
郵政公社のままで改革できるのではないかと問われた武部氏が「なぜ郵政公社の職員が公務員でなければならないか。大きな政府か小さな政府か。市田さんや又市さんとは理念が違う」とのべたため、市田氏は次のように反論しました。
市田 日本共産党は大きな政府をめざしているといま武部さんが言われたが、何回も議論しているように、郵便局で働いている人には税金は一円も投入していない。
それから民営化したら税金を払う、いまは公社だから払ってないというが、いまでも国庫納付金というのは公社が四年間の利益の50%を国に納付するんですよ。民営化したら税金の方が安くなるというのは、竹中さん(郵政民営化担当相)が国会で答弁しています。二〇一六年に公社の国庫納付金なら三千五百十四億円、民営化したら50%の新規業務をやったとしても二千九百億円なんです。税金をたくさん払うというのは事実と違う。
悪法のための会期延長反対
「基金」を設けることについて市田氏は、いま政府は“一局六百万円を二千局に”といっているが、赤字は一万一千局で平均赤字額は一千万円以上だと指摘。仮に「基金」一兆円としても運用益でまかなうことはできず、撤退せざるをえない郵便局がうまれると指摘しました。この指摘に武部氏は「改革を何もしなくてもいいという姿勢では…」とまともに答えることができませんでした。
国会審議入りで与党側が特別委員会設置を求めたのに対し、川端氏は「法体系に問題があり出し直すべきだ」とのべ、特別委設置に反対。市田氏は「NTT問題のときも郵政公社のときも逓信委や総務委でやっている」とのべ、法案撤回を求めるとともに特別委設置と悪法を通すための会期延長に反対しました。
■アジア外交――平和の大戦略が大事
悪化している日韓、日中関係の改善がテーマとなりました。武部氏は「韓国側の姿勢に厳しさを感じた。対話を重ね信頼関係を構築する」と訪韓しての感想をのべ、川端氏は「小泉首相がこういった事態を招いた」と批判しました。市田氏は問題の本質と日本の取るべき道について次のようにのべました。
市田 アジア・アフリカ会議で小泉首相が村山談話を引用したが、アジアと世界が日本に批判を向けているのは、その言葉と行動が違うじゃないかということです。
日独伊が起こした侵略戦争で数千万人の人が命を奪われ、二度とやってはならないというのが戦後政治の原点で、日本の戦後の出発もそうだと思うんですね。ところがそれに反する小泉首相の靖国神社参拝や、侵略戦争を“自存自衛のやむを得なかった戦争”と記述する歴史教科書を検定合格させる。不戦の誓いに反します。
少なくとも首相は任期中は靖国への参拝をやめるべきです。また、植民地支配と侵略戦争への反省を教科書に反映させるべきです。アジアの外交重視というなら口だけでなく、何か起きれば軍事対応ではなく平和の大戦略を持つことが大事だと思います。