2005年5月23日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

マルチで勝ち組?

就職難の学生狙う悪徳商法


 大学生の間でここ数年、マルチ商法、マルチまがい商法の被害が増えています。高額な健康食品や化粧品などを買わされ、消費者金融で借金する例も…。国民生活センターでも注意を呼びかけています。

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悪徳商法の勧誘に注意を呼びかける大学の広報紙

大学中退して

 ある女性=九州在住=は、「ネットワークビジネス」と呼ばれるマルチ的な商法に夢中になっています。大学四年をむかえる今年四月、「ネットワークビジネスで生きていく」と大学を中退。就職活動もやめました。

 消費者自身が会員となり、商品を口コミで販売するだけで収入が得られるというネットワークビジネス。ローンを組み、大量に商品を買わせたりするのが特徴です。

 女性がネットワークビジネスを始めたのは半年前。きっかけは、アルバイト先の友人の誘いでした。

 「環境にいい」「他社製品と比べても汚れが落ちる」という一本一万円ほどするシャンプーや洗剤。会員や売り上げを増やすごとにマージンがあがります。

 「成功して高級マンションに住んでいる人もいる」「友人に紹介するだけでボーナスもある」

 昼は働きながら、夜は大学に通っていた女性。業者が語る夢物語に、はまっていきました。週に二回ほど会員の集まりもあり、「うまく売れないときもある」と励ましあう人間関係もあります。

 「彼女からどんどん人が離れ、人間関係が崩れていくのが何より心配。サラ金に手を出したりと、取り返しがつかなくなる前にやめさせたいけど、どうやって説得したらいいのか…」と友人の男性(23)は声を落とします。

道を見つけた

 女性の家族や友人もネットワークビジネスをやめさせようと必死に説得しています。しかし、「やっと自分の生きる道を見つけた」とばかりに目を輝かせる女性。「好きでやっている」「間違った商品は売っていない」と聞く耳を持ちません。

 男性はいいます。「就職難に、過酷な労働。そこに『楽してもうかる』なんて話を目の前に出されたら、乗りたくなってしまう気持ちも分かるんです。だからこそ早く救いださなければと思うんです」


借金背負い友人も失う

 マルチ商法問題に詳しい、村千鶴子弁護士・東京経済大学教授の話

 最近のマルチ・マルチまがい商法は「みんなで一緒に勝ち組、実業家になろう」という決め文句が特徴です。現実を見れば就職をした先輩からは、厳しい労働環境が聞かされます。自分は就職活動で疲れきっている。そんな中に巧みに入り込んできます。

 「わずかな資金で起業。ビッグビジネス成功間違いなし」などともいっていますが、間違いのないビジネスはありません。実際に、初めに商品を買うための借金で、大学の四年間をバイトに明け暮れた学生もいます。

 マルチ商法にのめり込んで起きる問題は、友人を無くすことや自らも借金を背負うことです。「ネットワークビジネス」などで勧誘を行えば、友人にも借金をさせることになります。また、「親友と思っていたのにマルチに誘われた」となると信頼関係も崩れる場合があります。

 マルチ商法は去年十一月「特定商取引法」が改正され、規制が強化されました。販売目的を隠し、閉鎖的な場所に誘い出して行う勧誘は、懲役六月、または百万円以下の罰金です。マルチ商法の勧誘のとき、やり方によっては犯罪になる場合もあるということは言いませんから、いつの間にか自分が犯罪者になっている危険もあります。

甘い言葉に乗らないで

 国民生活センター・相談調査部の河岡優子さんの話

 マルチ商法にはまり相談してくる人の多くは「簡単にもうかる」「すぐ収入につながる」などと甘い言葉で勧誘されています。しかし世の中に「簡単にもうかる」話などありません。もうけるには多くの人を集めなければいけません。

 しかし、ほとんどの場合、それほど人は集まりません。結果、大量の在庫を抱え、誘いやすい友人に無理な勧誘や販売を迫る。十万―二十万円の購入資金のためにサラ金に手を出し、返済に苦しむ人がたくさんいます。 マルチ商法は二十日以内であればクーリングオフで解消できると、安易に契約を結ぶケースもあります。しかし、返金に応じない、または返金能力がない会社もあります。うまい言葉には乗らず、慎重に対応することが大切です。


トラブル相談が急増

 過去5年間、国民生活センターにはマルチ商法のトラブル相談が、年間約1万6000件から2万1000件寄せられています。学生の相談数は2000年度が717件だったのに03年度1611件、04年度1407件。この3、4年で2倍を超える数に。同センターは、トラブルが増えている背景に(1)学生の参加を禁止していない業者がある(2)禁止していても業者側がチェックしていない(3)加入時、数十万円の商品を購入する際に消費者金融から借り入れることに抵抗感がない―ことがあると指摘しています。

大学も注意呼びかけ

 都内のある大学の学生生活相談窓口には、マルチ商法によるトラブルの相談は、年間50から100ぐらいあるといいます。「月1回ぐらいの相談回数がある」という大学もありました。

 勧誘の仕方は、新入生にたいしては「高収入アルバイト」「やる気がお金になる」という、うたい文句。3年生、4年生には、就職に絡めた「儲かるネットワークビジネス」。担当者は「若い学生のやる気を利用するものが多い」と話しています。

 最近は「アダルトサイトの架空請求」「振り込め詐欺」などのトラブルが多いといいます。

 各大学では、新入生に入学時に配る文書や学内の広報、掲示板で「『おいしい』アルバイトなんてない」などと注意を呼びかけています。 


お悩みHunter

ずっと彼氏がいない私は欠陥人間かな?

  私はずっと彼氏がいません。好きな人ができても片思い。そうして二十七歳になりました。このまま年をとっちゃうのかな? と不安なこのごろです。私は、おとなしい性格なので、うまく付き合えるのかという不安と自信のなさがいつもあります。お見合いしかないかな、欠陥人間かな? などと思ったり…。(派遣社員、女性。千葉県)

自分をオープンにしながら

  今の若い人たちは、化粧したり洋服で飾ったりして、表面上のつきあいになっている感じがします。内面でつきあうのが「不安」という人が、増えているようにも思います。あなたは「おとなしい」ということもあって、人間関係に「親密性」を求めているようですね。

 職場でも家でも、人と人の親密な関係が、なかなか見えにくくなっています。あなたの悩みには、そういう人間関係の問題が、含まれているように思います。決して欠陥人間ではありません。

 人と人がつきあうことは、なかなか難しいものです。ですから、あなたは「生の自分を出すと壊れてしまう」と思っているかもしれません。男性って、よくわからないのかもしれませんね。

 私たちって、自分自身をオープンにし、いろいろなことを通じて発見し、悩んだりしながら成長していくものだと思います。そうして、「男性」も知っていくものです。“人生とつきあう”ということでしょうか。

 タペストリーは、いろいろな糸が交じり合った織物です。タペストリーのように、あなたは人とあまり交じり合っていないのかもしれませんね。

 今の若い人たちは、上手につきあうことばかりを考えます。つきあうのがへたで、かっこ悪くてもいい。それを容認できる自分であってほしいと思います。


 精神科医 上村順子さん 山口大学医学部卒。代々木病院、松沢病院などで勤務。99年からめだかメンタルクリニック院長。


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