2005年5月25日(水)「しんぶん赤旗」
朝鮮総連結成50周年に当たってのあいさつ
日本共産党中央委員会議長 不破 哲三
|
在日本朝鮮人総連合会の結成五十周年に当たり、お祝いのあいさつを申し上げます。
私たちは、あなたがたの組織が、在日朝鮮人の生活と権利を擁護する活動において、また日本と朝鮮民主主義人民共和国――このあと「北朝鮮」と略称することをご了解ください――、日本と北朝鮮とのあいだの友好・交流の関係の確立をめざす活動において、大きな成功をおさめられることを願っています。
私たちはまた、今後の日朝国交正常化交渉に、あなたがたが北朝鮮代表の一員として参加されることを、たいへん重く見ています。
日朝平壌宣言を堅持し、その生きた力を発揮させる
日朝関係は、なかなか難しい局面を迎えていますが、いままず大事なことは、二〇〇二年の首脳会談で確認し二〇〇四年の首脳会談で再確認した「日朝平壌宣言」を、双方が堅持することです。これは、過去の植民地支配にかかわる歴史問題についても、拉致問題、核問題を含む当面の諸問題についても、その解決の目標と方向を示した包括的な合意文書、いわゆるロードマップとしての意義をもつものです。さまざまな経過はありましたが、双方どちらの側もこれを否定してはおりません。双方の努力で、この平壌宣言の生きた力を発揮させることが重要です。
拉致問題――最初の決断は一連の問題に誠実に対応してこそ友好への道につながる
拉致問題では、分析的な対応が必要になっています。平壌宣言を確認した第一回首脳会談で、北朝鮮側は、自分たちが拉致という国際的な犯罪行為を犯していたことを認めました。これは、大きな勇気を必要とする決断だったと思います。しかしこの問題は、事柄の性質からいって、一回の決断だけですむものではありません。当然、この犯罪にともなう多くの問題が提起され、その解決が求められます。それらに一つひとつ誠実に対応し、双方で必要な努力をつくしてこそ、問題の全面的な解決に到達することができるし、それによって、最初の決断が、両国の友好と信頼の関係を築く大きな道にもつながってゆくものです。そのことはまた、北朝鮮と国際社会との関係を改善することにも貢献しうるものです。
拉致協議前進のカギは「特殊機関」の問題の解決にある
過去三年間の推移は、前進もありましたが停滞・後退もあり、現在は交渉が中断しています。私たちは、この間、日本政府から交渉経過の詳細を聞いて、一つの重大な事実にぶつかり、本当に驚きました。それは、拉致という国際犯罪をおかした「特殊機関」が大きな権限をもって現在なお存在していること、そして、拉致問題をめぐる日朝交渉にも、この機関の存在が重い影を落としていることです。ここから生まれる障害を取り除かない限り、拉致問題をめぐる協議は双方が納得できる前進には向かわず、日朝交渉の全体が前途をもちえないことになります。
私たちが、昨年十二月、拉致問題の協議について、より権限ある代表、すなわち、「特殊機関」の存在に左右されず、ことの真相を追求する力をもった代表が、交渉にあたることを北朝鮮側に求めたのは、この見地からです。私たちの真意をぜひ理解いただきたい、と思います。
交渉打ち切りや「力の政策」など平壌宣言にそむく態度をいましめあう
交渉の道というものは、安易なものではありません。相手側が気に入らない態度をとることは、双方の側に起こりうることです。それを、真実と道理の尊重に立った話し合いで解決しつつ進むのが、国と国との責任ある交渉です。しかも、現在の日朝交渉は、平壌宣言という首脳同士の合意にもとづいての交渉です。相手の態度が気に入らないからといって、安易に交渉打ち切りの態度をとったり、「力の政策」に訴えたりすることは、平壌宣言にそむくものとして、たがいに戒めあうべきではないでしょうか。
「非核化」での六カ国合意こそ安全保障の最善の道
核兵器の問題では、六カ国協議という、問題の解決のための国際的な枠組みができています。この問題での合意が実現し、「朝鮮半島の非核化」が達成されるならば、この枠組みは、参加国の安全を保障する枠組みに発展できるものです。その合意を無視して、ある国が他の国を一方的に攻撃するようなことは、六カ国協議の他の参加国が絶対に許さないでしょう。私は、その意味では、六カ国協議という枠組みは、東アジアの国ぐにの安全を保障する新たな枠組みに発展する必然性を備えている、と見ています。この展望のもとに、北朝鮮が、核兵器廃絶という人類的課題に逆行する核開発の道を歩まず、六カ国協議の場で、「朝鮮半島の非核化」という最初からの目標の達成に真摯(しんし)な努力をつくすことを、強く要望したいと思います。
私たちは、現状の打開に力をつくす用意がある
私たちは、北朝鮮の政府および政権党とのあいだでは、ご承知のような事情から、一九八〇年代以来、なんの関係も持っていません。しかし、日本と北朝鮮とのあいだの諸懸案を解決し、日朝関係の正常化を実現するために、私たちができる有効な仕事があるならば、喜んで実行に移し、力をつくす用意があります。
私たちは、あなたがた朝鮮総連との関係を、五年前に正常化しました。こうして再建された新しい関係が、日朝関係の前向きの打開と諸問題の解決、平壌宣言が最終目標と定めた国交正常化のために役立つことを願って、あなたがたの組織の結成五十周年に当たってのお祝いのあいさつとするものです。