2005年5月26日(木)「しんぶん赤旗」
遺伝子組換え作物の栽培 法的規制は?
〈問い〉 遺伝子組換え作物がふえているようで不安です。栽培に法的規制が必要では?(北海道・一読者)
〈答え〉 わが国で遺伝子組換え作物を屋外で商業栽培するには、食品衛生法・飼料安全法によって食品・飼料としての安全性の審査をうけるとともに、遺伝子組換え生物の多様性確保に関する法律(カルタヘナ法)によって野生生物への影響審査を受けることが必要です。
現在、わが国で商業栽培できる組換え作物は、大豆、ナタネ、トウモロコシなど22系統ありこの審査さえ受ければ、どこでも自由に栽培できます。
いまはまだ国内で商業栽培は行われていませんが、もし屋外で大規模栽培された場合、周囲の一般作物との交雑や混入、生態系への影響が危ぐされます。
昨年、北海道の生産者が遺伝子組換え大豆の栽培を表明し、これに対し、農家や消費者などから反対の声が広がりました。
カナダでは、有機栽培のナタネ畑が組換えナタネの種子に汚染され、有機栽培ができなくなったと1000人の農民が裁判をおこしています。
問題は、多くの消費者が遺伝子組換え食品の安全性や生態系への影響に強い警戒心をもっているにもかかわらず、わが国には一般の農作物への交雑や混入など影響を防止する法的な規制がないことです。
ヨーロッパでは、遺伝子組換え食品の新表示制度制定まで、栽培・流通を停止し、非組換えの慣行農業、有機農業にたいする影響を防止するガイドラインを作成。ドイツでは「汚染者負担」の原則をもりこんだ遺伝子組換え作物栽培規制法が成立していますが、それでも遺伝子組換え作物との「共存」は困難と遺伝子組換え作物フリーゾーンの運動がひろがっています。
紙智子参院議員は、4月12日の農林水産委員会で、一般の農作物への影響被害を防止するための法的枠組みが必要と主張しましたが、島村宜伸農林水産大臣は「新たな仕組みを設ける必要はない」と拒否しました。国の対策の遅れに業を煮やし、北海道などいくつかの自治体で遺伝子組換え作物の栽培に関する条例が制定されています。
環境や農作物に影響が生じてからでは遅いのです。生態系も農業も脅かさない実効性ある対策が求められます。 (増)
〔2005・5・26(木)〕