2005年5月28日(土)「しんぶん赤旗」

歴史共有し平和築く

日中韓共同の教材出版


 日中韓三国の研究者らが共同編集した歴史教材『未来をひらく歴史』が三国で同時期に発刊されるのを受け、作成した「共通歴史教材委員会」が二十七日、都内で記者会見しました。日本側代表の大日方純夫・早稲田大教授は、「東アジアに平和な未来を開くには、歴史認識の共有が前提となる。幅広い学生や市民に手にとってほしい」と語りました。

 東アジア近現代史の教材を三国共同で出版するのは初めてといいます。市販のほか、副教材として学校での利用を呼びかけます。

 教材は、日本軍による加害行為をそれぞれ項目を立てて説明するほか、原爆投下や沖縄戦など日本民衆の被害も詳しく記述。近現代の三国のかかわりを各国の視点から描きます。「少数者や女性、民衆の生活文化も丁寧に書くよう心がけた」と大日方氏は語りました。

 この企画は「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が問題となったことから二〇〇二年三月に始まりました。各国に歴史家らの委員会を設置し、分野ごとに分担して執筆。原稿は各国語に翻訳し、メーリングリストを介して相互に検討を重ねました。計十回の国際会議も開きました。

 編集作業では、各国の歴史認識の違いを乗り越える膨大な議論が交わされたといいます。委員の一人、笠原十九司・都留文科大教授は「中国、韓国では原爆投下が日本の侵略を終わらせたという見方があり、激論になった」と紹介。それでも被爆の悲惨さを伝える記述で収まりました。

 笠原氏は「自国益中心の歴史認識を克服する第一歩。今後も改訂を続けたい」と語りました。

 韓国版はすでに発売され、中国版も来月に発売されます。日本語版が店頭に並ぶのは六月初めの見込み(A5判223ページ、税抜き千六百円)。問い合わせは高文研(03―3295―3415)へ。


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