2005年6月6日(月)「しんぶん赤旗」
沖縄戦の「集団自決強要」
教科書から削除狙う 「つくる会」副会長ら
体験者や作家ら集会で批判
「事実から目そらす」
沖縄戦での「集団自決」をめぐり、「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長らが「集団自決強要」の記述を教科書などから削除することを求める“運動”をはじめました。こうした動きにたいして、沖縄戦体験者などから「天皇のために死ね、絶対に捕虜になるなと教えられてきた。国の責任をあいまいにするもの」と批判の声が出ています。
四日、藤岡氏が主宰する「自由主義史観研究会」のシンポジウムでは「集団自決が日本軍の命令で強制されたというのはウソ」などとする「模擬授業」をおこない、文科省や出版社に対して教科書をはじめ子どもの読み物、歴史書などから「集団自決強要」の記述を削除するようもとめる決議を採択。藤岡氏は「従軍慰安婦」の記述がすべての中学校歴史教科書から消えたように「集団自決強要」についても「必ずそういう日がくる」とのべました。
国の方針が原因
「つくる会」の歴史教科書では沖縄戦にかんする記述はわずか二行半。「集団自決」は取り上げていません。住民犠牲者の数も、ほかの教科書が十二万人以上などとしているところを九万四千人と書いています。
これに対して五日、東京都内で「沖縄平和ネットワーク首都圏の会」が集会を開きました。
ノンフィクション作家の下嶋哲朗さんが講演。日本軍が直接かかわっていないチビチリガマでの「集団自決」の例をあげ、住民らが「天皇のために死ぬことがりっぱだ」とたたきこまれており、そういう教育をした国の方針が一番の原因だと指摘。「『集団自決』にはさまざまなケースがある。軍命があったか、なかったかというのは事実から目をそらせ問題をわい小化するもので、『自由主義史観』の人たちの意図もそこにある」とのべました。
「捕虜になるな」
参加者には沖縄戦体験者もいました。ひめゆり学徒隊の生き残りである上江田千代さん(75)は、「小学校のときから皇民化教育で天皇のために死ぬことがあたりまえ、米兵につかまれば辱めを受ける、絶対に捕虜になるなと教えられてきた。将校から手りゅう弾をもらって身につけていた」と発言。藤岡氏の活動について「『軍の命令がなかった』というのは問題のすり替えで、国の責任をあいまいにするもの」と批判しました。
沖縄戦で当時二十八歳の父と三歳の兄を失った元高校教師(60)は「軍の直接の命令がなかったとしても、それまで軍の命令を伝えていた役場の職員などが命じれば住民は従う。強要であることにかわりはない」。
集会では「集団自決」にかんする母親の証言を著書に書いた宮城晴美さんのメッセージが読み上げられました。「自由主義史観研究会」はこの母親の証言を「軍命はなかった」とする根拠に使っています。宮城さんはメッセージで、著作を「都合のいいようにつまみ食い」され腹立たしい思いをしているとのべ、「軍の命令はなかったということに固執し、なぜこのような悲劇が起こったのかを解明することなく」、子どもたちにかつてと同じような教育をおこなおうとしていると批判しました。
「集団自決」 一九四五年三月からの沖縄戦のなかで、住民らが、日本軍に渡された手りゅう弾を爆発させたり、親が子どもを殺すなど集団で死に追いこまれました。さまざまな形で強要されたものであり、「自決」ではなく「集団死」と呼ぶべきだという意見もあります。