2005年6月10日(金)「しんぶん赤旗」
消費電力 表示の3倍!?
冷蔵庫カタログ 実態と違う
JIS規格 一部通電せず試験
「消費電力量約6分の1(十年前当社品と比べ)」「省エネルギー製品の開発」など、大手家電メーカーが省エネを売り物にしている電気冷蔵庫。ところが、実際の消費電力量はカタログ表示の三倍近くになるなど、実態とまったくかけ離れていることが明らかになりました。経済産業省や各メーカーは、この実態を知りながら、消費者をあざむく表示を続けてきました。
昨年四月、三菱電機製の電気冷蔵庫を購入した埼玉県のAさん(58)は、「電気代が高い」という妻の指摘で、冷蔵庫の消費電力を調べてみてびっくりしました。
カタログの年間消費電力量は二六〇キロワット時。Aさんの冷蔵庫は、留守にして一度も開閉しなかったときでも、年間に換算すると六四二―七一五キロワット時に。カタログ数値の二・五―二・八倍にもなりました。金額にすると一万円前後も違います。
メーカーに質問すると「カタログ表示は、JIS C 9801規格(消費電力量測定方法)で定められた条件で実験した場合の数値で、実際に家庭で使用した場合は、違う数値になるのが実情」「(Aさんの冷蔵庫の数値は)故障によるものでなく製品の実力相当」という回答でした。
Aさんは「リッター当たり二十五キロ走ると言われて買った車が十キロしか走らなかったようなものです。“JIS規格で実験している”と言われて納得できるはずがありません。“詐欺的商法”と言われてもしようがないひどい話です」といいます。
なぜ実態とかけ離れた数値になるのか。大手家電メーカーによると、「JIS規格は、ヨーロッパの2ドアタイプの冷蔵庫をベースに作られているため、結露防止ヒーター類、野菜の凍結防止などのための温度保証用ヒーター類などの機能は通電しない状態で試験している」として、「冷蔵庫の消費電力が、カタログ記載と実際の数値で大きく異なるのは事実。二―三倍の差になることもある。消費者に正確な情報が伝えられていないことは問題だととらえている」(三菱電機冷蔵庫製造部品質管理課)。同社では、「すでにカタログの(電力消費量に相当する)“電気代”の項目を削除している」といいます。
JIS(日本工業規格)は経済産業大臣が制定しており、各メーカーの消費電力表示に国がおすみつきをあたえています。JIS規格の事務局を担当する経済産業省産業技術環境局情報電気標準化推進室も、「実態との乖離(かいり)は、各社とも知っていることですから、できるところから見直していくことが必要と考えている」といいます。
日本電機工業会・江藤一哉家電部業務課長の話 現行JIS規格による試験は、凍結防止用ヒーターなどのスイッチを切った状態で実施することに決まっており、結果として表示した使用電力量と実態が離れるようになってきた。この事態は、改善が必要。新しい測定方法を検討している。当面の対策としては、カタログなどの表示を改善し、JIS規格の数値が実際の数値であるとの誤解を招かないようにしたい。