2005年6月11日(土)「しんぶん赤旗」
主張
所得課税「改革」
勤め人も自営業者も大増税
政府税制調査会(首相の諮問機関)が進めている所得課税「改革」の概要が明らかになりました。諸控除の大半を縮小・廃止して、所得税などを大増税しようとしています。
所得税の計算で、会社員らの給与から一定割合を差し引く給与所得控除の縮小。退職金の控除の縮小。収入から三十八万円を差し引く配偶者控除の縮小・廃止、十六歳以上二十二歳以下の子一人につき六十三万円を差し引く特定扶養控除の廃止…。
障害者向けなど一部を除いて所得控除を根こそぎ縮小・廃止する、情け容赦のないやり方です。
ほとんどの労働者対象
国から地方に税源移譲するために、現在5、10、13%の三つの区分になっている個人住民税の税率を10%に一本化します。代わりに10―37%の所得税率を、最低税率5、最高税率40%にする方針です。
個人住民税の税率を5%から10%に引き上げることによる低所得者の負担増を、調整するために新設するのが5%の所得税率です。
しかし、政府税調の石弘光会長は5%の所得税率について「それがいつまで続くかは今後の財政運営、あるいは税制改革の話」「エンドレスに続くわけではない」と明言しています(五月二十七日の記者会見)。
財政と税制の都合を優先し、国民生活を無視することは許せません。
政府税調は子育て支援のための所得税の税額控除を検討しています。これだけの増税がかぶされば、多くの子育て世代では税額控除など吹き飛ばされ、負担だけが増やされてしまいます。少子化対策に完全に逆行します。
とりわけ、給与所得控除の縮小は、ほとんどの勤め人の財布に大きく響きます。
給与所得控除は最低保障が六十五万円、控除率は所得が低いほど大きくなっています。例えば年収が百万円の人は六十五万円の最低保障、三百万円の人は百八万円、七百万円の人は百九十万円、五千万円の人は四百二十万円の控除額です。
仮に給与所得控除を半減するなら、年収三百万円の独身者の場合、五万四千円の増税となる計算です。
政府税調は、給与所得控除を縮小する理由について、「控除額が実際の経費を大幅に上回っている」からだと説明しています。
給与所得控除は、自営業者が事業経費を収入から差し引くのと同様に、会社員らの必要経費を概算で控除する役割を持っていますが、それだけにとどまりません。もともとの低収入を補うための控除、源泉徴収で早期納税するために失う金利の調整のための控除など多様な要素を持っています。
実際の経費はもっと少ないはずだという紋切り型の理由で切り捨てられてはたまりません。
政府税調は、会社員らの給与所得控除を見直すのだから、自営業者の事業所得も見直すのは当然だとして、記帳義務を厳しくするなど自営業者への徴税も強化する方針です。
無謀な増税路線許さず
日本の課税最低限は欧米と比べても低く、より低所得の人からも税を取るようになっています。各種控除の縮廃は、日本の税制をますます低所得層につらい税制にします。
政府税調は、これらの「改革」を三、四年内に実現する考えです。その間、政府・与党は定率減税の全廃や消費税増税を計画しています。こんな計画を許したら、くらしも経済も計り知れない打撃を被ります。
国民の共同を強めて、無謀な大増税路線をやめさせましょう。