2005年6月11日(土)「しんぶん赤旗」
米軍事援助が紛争助長
米大学研究所
世界の緊張高める
【ワシントン=浜谷浩司】米国の対外武器供与はしばしば紛争や人権侵害をあおる結果になっている―。米ニュースクール大学(ニューヨーク市)の世界政策研究所がこのほどまとめた報告は、米国の対外軍事援助が世界の緊張を高めていることを浮き彫りにしています。
報告はデータがそろう二〇〇三年度までの米国の軍事援助の実態を分析。それによると米国が武器を供与してきた国には、エチオピアやコロンビア、イスラエル、インド、パキスタンなど、紛争を抱えていると同研究所が認定した二十五カ国のうち十八カ国が含まれています。
そのなかには、軍事的に対立している国同士も含まれ、「互いに相手をいっそう威嚇する」事態を生み出しています。
報告はまた、米国から武器を供与されている途上国上位二十五カ国のうち、半数を超える十三カ国については、米国務省自体がその人権報告で「非民主的」と規定していることを指摘。
「民主主義」を拡大するというブッシュ米大統領の表向きの方針と、実際の対外政策との間に大きな矛盾があると強調しています。
米国の対外軍事援助はブッシュ政権下の〇一年度から〇三年度にかけて急増。その中核となる「対外軍事融資」は〇一年度の三十五億ドルから〇三年度には六十億ドルに増加しています。
イラク戦争に突き進んだこの時期にもっとも大きく伸びたのは、ヨルダン、アフガニスタン、パキスタン、バーレーンなど、「イラクやアフガンでの戦争に直接、間接にかかわった同盟国」だと指摘。米国が軍事援助をテコに戦争への協力を広めようとしたことを示唆しています。
「対外軍事融資」の〇六年度の米政府要求額は四十五億ドルで、ピーク時の〇三年度からは減少したものの、〇一年度に比べてなお十億ドル増。また、対象国は〇一年度の四十八カ国から七十一カ国へと大きく増えています。ブッシュ政権の「対テロ戦争」政策の表れです。
その具体例として、報告はウズベキスタンを取り上げています。同国は「〇一年以前には米国の戦略地図に登場せず、軍事援助はほとんどなかった。それが対テロ戦争とアフガン戦争で一挙に変わった」(報告)。同国への米軍事援助は〇三年度に八百六十万ドルと、それ以前の六年間の合計額を上回りました。
報告は、米政府が従来から人道、医療、開発などの対外援助に比べて、軍事援助をより重視してきたことを指摘。そのうえで、軍事援助政策の転換を求めるとともに、「最低でも、武器供与や軍事援助計画に厳しい検討を加えるべき時がきた」としています。