2005年6月11日(土)「しんぶん赤旗」

CS放送「各党はいま」

志位委員長が語る

靖国参拝 どこが問題か


 日本共産党の志位和夫委員長は九日放送のCS放送・朝日ニュースター「各党はいま」に出演し、小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題をどうみるかについて、朝日新聞の本田優編集委員のインタビューに答えました。


予算委員会の質疑から

 ――衆院予算委員会で、靖国神社の戦争観を問題にされていましたね。

 志位 靖国神社の発行した本――『靖国神社 遊就館図録』をみると、戦争観ということでは、二つの大問題があると思います。

 一つは、過去の戦争を「自存自衛」「アジア解放」のための正義の戦争ということで、丸ごと正当化するという立場です。

 もう一つは、そうすると悪いのは相手ということになり、悪かったのは中国であり、さらにアメリカだということになる。アメリカが石油などの禁輸で日本を追い詰め、戦争を強要したということがのべられています。

 私が、首相の靖国参拝は、侵略戦争の正当化という靖国神社の戦争観にお墨付きをあたえることになるではないかとただしたのにたいして、首相は、「靖国の考えと、政府の考えは違う」「日本に戦争責任がある」「戦争を正当化するつもりはない、誤解しないでほしい」という答弁でした。そういうなら(参拝という)行動に大きな矛盾があります。

村山談話への攻撃

 ――言葉だけではなく、行動で示すということに、ズレがあるということですね。

 志位 いくら「戦没者への哀悼の気持ちでいっているだけだから、誤解しないでくれ」といっても、無理筋な話です。行動そのもので、言葉を裏切っているのです。

 大きな流れをみると、一九九五年に村山談話が出されます。不十分さはあるが「植民地支配と侵略」への「反省とお詫(わ)び」をのべた。それにたいして“靖国史観”派は、そうとう激怒したようで、「反撃」をはじめました。

 これは靖国神社の宮司がその刊行会に参加している、靖国神社公認の「写真集」――『世界に開かれた「昭和の戦争記念館」』ですが、これをみると侵略戦争を“日本民族の力がすべて発揮された壮大なスケールの大戦争”と礼賛し、「嘘(うそ)と誤りに満ちた村山談話」として、ここに激しい攻撃をむけています。

 そういう流れのなかで、今日の事態がおこっている。政府の立場を「嘘と誤り」と攻撃する立場の神社に参拝するというのは、どういうことなのか。まったく矛盾した行動ということになるわけです。

“靖国史観”派を孤立させる

 ――この問題は、日本外交に多大な影響を及ぼしています。五月十二日の不破議長の時局報告会で「なるほどな」と思いました。日本外交が行き詰まっている最大の根っこには、植民地支配や戦争にたいする日本政府の態度があるとして、過去の侵略戦争に日本政府が向き合えていないから、現在の正義と不正義の判断基準がしっかりもてない、といっていましたね。

 志位 不破議長の講演は、問題点をずばりつくものでした。日本の過去の戦争の善悪の判断ができないから、ヒトラーの侵略戦争も、九〇年のイラクのクウェート侵略についても、日本政府は「侵略」といえなかった。

 私たちは、この問題をみるさいに“靖国史観”――「日本の戦争は正しかった」と信じ込んでいる政治家と、それ以外の人々をわけています。保守の政治家でも、“靖国史観”にまで戻ってしまったら、日本は生きていけなくなると考えている人は多い。ネオ・ナチ派ともいうべき“靖国史観”派を孤立させていくことが大切です。

A級戦犯分祀論について

 ――A級戦犯の分祀(ぶんし)という意見も自民党内にありますが。

 志位 分祀したからといって、問題の解決になりません。靖国神社の戦争観こそが最大の問題で、それが変わるわけではない。むしろ侵略戦争を正当化する戦争観をもっているからこそ、A級戦犯を「ぬれぎぬ」――戦争犯罪はなかったという立場で合祀(ごうし)している。だから分祀には応じないというのが神社の立場です。首相が参拝を中止することが、唯一の解決の方法です。


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