2005年6月12日(日)「しんぶん赤旗」
「つくる会」教科書
都教委が肩入れ
宣伝文と同項目で資料作成
東京都教育委員会が市区町村教委の教科書採択に対する「指導・助言」の一環として、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史・公民教科書(扶桑社)が有利となる項目を特別に設けた資料を作成していることがわかりました。
この資料は九日の都教委の会議で了承された「教科書調査研究資料」。近く市区町村教委に採択の「参考」として送付される予定です。
同資料の「抜粋版」によると、歴史では「日本の神話や伝承」と「北朝鮮による拉致問題」、公民では「拉致問題」と「我が国の領域」について特別に項目を設けて各教科書の扱いを比較。「神話」では行数まで数えて、「神武天皇の東征」などを取り上げた扶桑社の歴史教科書が最も多いことを示しています。このほか「拉致問題」や竹島などを扱った「我が国の領域」の記述も扶桑社の公民教科書が他社より多くなっています。
「つくる会」は自分たちの教科書について会報やパンフレットで「国の成り立ちに関する神話をきちんと紹介」「北方領土、竹島、尖閣など領土問題や北朝鮮による拉致問題を積極的に取り上げた」などと宣伝しており、「研究資料」はこの宣伝とぴったり重なる項目を選んでいます。
都教委は二〇〇一年の中学校教科書の採択時の「調査研究資料」ではこのような特定の項目の比較は行っていませんでした。「つくる会」の教科書は広島・長崎の原爆被害などの記述が他社より少なく、日本の「侵略」という言葉もありませんが、そうした点にはふれていません。
偏ったやり方
歴史教育者協議会の石山久男委員長の話 教科書にはさまざな学習内容が配列され、年間の学習活動がつくられています。特定の項目だけを取り上げて基準にすること自体が極めて偏ったやりかたで、本当にいい教科書を選ぼうというものではありません。扶桑社の記述が多い特殊な項目を選んでいるとしか思えません。このような教育的でない「資料」をもとにした採択をしないよう求めていくことが大事だと思います。