2005年6月14日(火)「しんぶん赤旗」

“シロ”実は“クロ”

米のBSE疑い牛

高感度検査で覆る


 米国でBSE(牛海綿状脳症)感染の疑いの強い牛が十一日(日本時間)、あらたに見つかったことで米国の検査体制のずさんさがあらためて浮き彫りになりました。今回のBSE「陽性」反応は、日本で実施されている高感度検査法で判明したものですが、これは米国では通常おこなわれていないもの。日本式の検査では“クロ”だったわけで専門家からも米国式の検査法のずさんさを指摘する声がでています。


日本なら通らず

 米農務省の発表によると、今回「陽性」となった検査方法は、日本では確定診断に利用しているウエスタンブロット法。問題の感染牛は、昨年十一月十五日から二十一日の間に抜き取り検査された七千九百頭のうちの一頭で、簡易検査では「疑陽性」と判定されました。しかし、二度目におこなわれた免疫組織化学検査という脳組織の一部を切りとって顕微鏡でみる確定診断の結果は「シロ」と確定診断されました。

 ところが、「農務省の監査部門がウエススタンブロット法による検査を勧告した」(農水省国際衛生対策室)ため、米国では従来行われていなかった三度目の検査を実施し、「シロ」判定が「陽性」に覆りました。

 日本では免疫組織化学検査と、高感度なウエスタンブロット法の検査の両方を実施し、そのいずれかで「陽性」となった場合に、BSE感染と診断しています。今回の米国のケースは、日本などの基準では本来感染牛と診断されるものです。

 日本では感染牛が出た場合、農場の牛の移動禁止や、感染牛と同じ餌を食べて育った牛も「擬似患畜」として処分し、市場に流通しないようにしています。米国ではそうした措置もとられていません。米農務省は、今回のBSE疑い牛が正常に歩けない「へたり牛」と認めていますが、「陽性」判定牛の月齢や生育地もいっさい発表しません。個体識別システムがないため、月齢などはわからないのが米国です。

 米国では二〇〇三年のBSE初確認以来、感染牛が見つかっていませんでした。その理由として高感度なウエスタンブロット法を使っていないことがプリオン病研究者から指摘されていました。

 現在、米国は、再検査を英国の研究所で依頼。数日後に検査結果がでる見通しです。しかし、日本で実施されている高感度法の確定診断で「クロ」と判定された以上、米国産牛肉輸入再開に向けた諮問を受けている内閣府食品安全委員会の審議にも大きな影響を与えるのは必至です。


 ウエスタンブロット法 世界で広く使われているBSE確定診断法。牛の脳をすりつぶして濃縮し、病原体と結合して発色する試薬を添加し、他の物質から病原体の異常プリオンたんぱくを判別する検査方法です。結果がでるには数時間を要します。


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