2005年6月16日(木)「しんぶん赤旗」
主張
郵政民営化法案
340兆円を日米資本の食い物に
郵政民営化を実行した場合、厳しい金融環境の下で民営郵貯は六百億円の赤字に陥る。民営化せず公社を維持すれば千四百億円の黒字になる(二〇一六年度)―。郵政民営化法案を審議している衆院特別委。日本共産党の佐々木憲昭議員の質問に竹中郵政民営化担当相が答えました。
なぜ、こんな危険を冒してまで民営化に固執するのでしょうか。
「結局、郵貯・簡保など三百四十兆円の国民の資産を日米の巨大資本に明け渡すことになる」。佐々木議員の指摘に、竹中大臣も小泉首相も答えることはできませんでした。
日米金融会社の要求
〇五年版「骨太方針」の原案は、郵政民営化を、「資金の流れを『官から民へ』」変える「改革」だと強調しています。
「資金の流れ」論で、これまで小泉首相が主張してきたのは、郵政民営化によって、「官」(特殊法人)のムダ遣いに流れる資金を絶つということです。しかし、ムダ遣いを正すには、ムダな事業そのものにメスを入れることこそ必要です。しかも、〇一年度の財投「改革」で特殊法人と郵貯・簡保の資金は切り離されています。首相の主張は完全に根拠を失っています。
残るのは「資金の流れ」の半面、郵貯・簡保の資金を「民に流す」という議論です。これを要求してきたのは国民ではなく、日米の「民」間金融会社です。
日本の大銀行・保険会社は長年、郵貯・簡保の貯金・保険契約の明け渡しを政府に迫ってきました。
一日の経済財政諮問会議に、郵政民営化による「資金の流れ」の変化を試算した資料が提出されました。
それによると郵貯・簡保の資金は〇三年度末の三百五十兆から一七年度末には二百十兆円に縮小。縮小分の百四十兆円と経済拡大による預金・保険の増加分の四百四十兆円、計五百八十兆円は全部アメリカ資本を含む民間金融会社が吸い上げます。
米国の目当ては千四百兆円に上る日本国民の個人金融資産です。
一九九六年、当時の橋本首相は金融ビッグバンに着手しました。金融を全面自由化し、預貯金など安全資産の比重が高い個人の金融資産を流動化させ、株式市場などに流れるようにつくりかえる狙いです。
宣伝文句はグローバルスタンダード(地球標準)。その実態は、米国の金融会社に都合のいい、株式市場を主役にした金融制度づくり。アメリカンスタンダードの移植にほかなりませんでした。
廃案にするしかない
背景に米財務省の圧力があったことは公然の秘密です。米国の産業の中で圧倒的な競争力を持つ金融部門の大もうけを保障するためです。
日本に進出しているアメリカ企業でつくる在日米国商工会議所は、金融自由化は進んだものの「簡保と郵貯の改革は日本の金融ビッグバンの対象外とされた」と指摘。次のように主張しています。
郵政民営化は「ビッグバン原則に則(のっと)って実施され、かつそれを補完する形で行われるべきである」。さらに外国人投資家の株式所有を規制しないよう説いています。
米国はブッシュ大統領を先頭に、日本の金融のアメリカ化を完成させるため、郵貯・簡保の買収も視野に入れて完全民営化を求めています。
民営化で資金の流れを変えるという政府の主張は、郵貯・簡保の三百四十兆円(五月現在)を日米の巨大金融会社の食い物にする暴論です。
こんな法案は廃案にするしかありません。