2005年6月16日(木)「しんぶん赤旗」
全米市長会議は 京都議定書支持
温暖化防止 地域から目標実現へ
米シカゴで開催中の全米市長会議は十三日、地球温暖化防止のために京都議定書が定めた目標を米政府が達成することを求めるとともに、自治体レベルでも目標到達を目指すことを支持する決議を全会一致で採択しました。
米国のブッシュ政権は二〇〇一年三月、京都議定書の離脱を表明。しかし、同国が二酸化炭素など温室効果ガスの世界最大の排出国であることから、議定書復帰を求める声が国際的に噴出しました。今回の全米市長会議の決議は、この問題での米政権への批判が米国内でも強まっていることを示しました。
京都議定書は、〇八―一二年間に九〇年比7%の温室効果ガス削減を米国に義務付けています。同議定書が発効した今年二月、シアトルのニッケルズ市長は議定書の目標の実現を米連邦政府と州政府に求めました。同時に、地域レベルの行動で目標実現を進めることを宣言する自治体間の協定の締結を全米の市長に呼びかけました。同協定には十三日までに百六十七の市長が署名。全米市長会議での決議は同協定を支持したものです。
決議の採択を受け、ニッケルズ市長は「温室効果ガス抑制のための連邦政府の行動を待つことはできない。地域や市ごとにリーダーシップを強めていく。これが全米の市長が明確にしていることだ」と語りました。
全米市長会議は、人口三万人以上の千百八十三市から成る超党派の組織。都市間の関係強化や都市政策の研究などが主な活動です。
シアトルから動き急速
大リーグ通算一千本安打を記録するなどイチロー選手が活躍するマリナーズの本拠地シアトルでは降雨・降雪量が異常に少ない冬が続いてきました。「地球的な気候変動の現実は差し迫ったものになっている。世界的にも地域からも行動が求められている」。ニッケルズ市長はこう考え、港を巡航する船舶の動力をディーゼルから電力に変えるなど、これまでに温室効果ガスを「一九九〇年比で60%以上削減」してきました。
「しかしこれだけでは不十分だ。市町村ごとに目標を定め、共同して取り組まなければならない」―ニッケルズ市長は京都議定書が発効した二月十六日、ブッシュ政権が同議定書に背を向けるもと、シアトル市自身が議定書を重視することを誓約するとともに、他の市長にも呼びかけることを決意しました。
温室効果ガスの排出では、都市部が占める比重が大きいからです。
三月三十日には、ユタ州ソルトレークシティー、バーモント州バーリントン、カリフォルニア州サンフランシスコ、オレゴン州ポートランドなど九市長とともに「全米市長気候保護協定」を呼びかけ、賛同・加入を訴える書簡を四百以上の都市に送付しました。
今月の全米市長会議までに、京都議定書発効時の批准国数と同じ百四十一の都市の加入を目指しました。この数は一カ月半後の五月半ばに突破。市長会議開幕前日の九日には三十七州の百六十四市長(総人口約三千五百万人)に達していました。(居波保夫)
京都議定書
二〇〇八年―一二年までに九〇年比5%の温室効果ガス削減を先進国に義務付け。各国目標も定められ、日本は6%、欧州連合(EU)は8%、米国は7%の削減義務を負います。