2005年6月20日(月)「しんぶん赤旗」

主張

池子の森

自然守れの声をさらに大きく


 池子の森(神奈川県)の横浜市側に米軍家族住宅を建設する動きが本格化します。防衛施設庁は、今月中に、住宅の高さや配置を特定する「基本構想」策定のための調査を企業に発注、配置などにめどがつき次第、地形測量に入り、来年三月までに作業を終える予定です。その後、環境影響予測調査をおこない建設に入りたいとしています。

 池子の森は、逗子市側で八十ヘクタールが開発され二百十ヘクタールに減ったとはいえ、依然として首都圏の貴重な自然の宝庫です。米軍のために池子の森を破壊させるわけにはいきません。

環境保全は国の責務

 政府は、米軍家族住宅七百戸を建設するのは、池子の森の横浜市側面積三十六ヘクタールの「半分以下」で、「自然環境の保全に配慮する」と言っています。しかし、横浜市側での建設は、池子の森の虫食い的開発であり、ひと続きの森だからこそ生まれた生態系を分断・破壊し、森のいのちを奪うことになります。

 横浜防衛施設局は、一九八七年、逗子側での米軍家族住宅建設に伴って環境影響予測調査報告書を神奈川県に提出しました。必ずしも十分な調査ではありませんでしたが、その報告書でも、天然記念物で絶滅危惧(きぐ)種のオジロワシや日米渡り鳥条約などで保護対象と指定されたキビタキやカシラダカなど十七種、その他アオゲラ、コサギなどの多くの貴重種が横浜市側で、確認されています。逗子市側で確認された絶滅危惧種のハヤブサや準絶滅危惧種のチョウゲンボウが横浜市で目撃されたことから、逗子市側から横浜市側に「移動」してきている貴重な鳥も相当数いるとみられます。

 渡り鳥条約には、「保護される鳥類の環境を保全しかつ改善する」と明記されています。政府は、横浜市側の建設をやめ、貴重な鳥を保護する責務があります。現状がどうなっているかも把握せず、米軍家族住宅建設を強行することは許されることではありません。

 池子の森を守ることは、二月に発効した「京都議定書」の地球温暖化防止義務を実施するうえでも不可欠な課題となっています。

 政府は、温室効果ガスの排出量を削減するとともに、森林による二酸化炭素吸収量を増やすため森林保全を強調しています。ガスの排出量は削減どころか増加し、実質14%も削減しなければなりません。そこで森林を保全して温室効果ガスを吸収させることを重視せざるをえなくなったのです。

 農林水産省と環境省の「地球環境保全と森林に関する懇談会」は、昨年九月に「地球環境保全と森林に関する懇談会報告」を出しました。報告は、「大都市周辺ではまとまった規模の森林が欠如」していると懸念し、「奥山や里山、そして都市の緑地まで、地域特性に応じて、必要な整備・保全のための措置」をとることを強調しています。

 環境保全というなら、池子の森を破壊することをやめるのが筋です。

不当な要求に屈しない

 もともと、家族住宅建設を、米軍が使わなくなった上瀬谷、深谷の両通信施設などの返還の条件にする日米合意自体が不当です。遊休化した基地は無条件で返す約束です(日米地位協定)。横浜市が日米両政府に追随して、建設を容認することに道理はありません。

 逗子市は、池子の森を守るために、政府を相手に裁判をおこしています。「自然を守れ」の声を大きくし、建設反対の運動を広げましょう。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp