2005年6月20日(月)「しんぶん赤旗」

イラク開戦理由のうそ証明

米政権揺るがす英首相官邸極秘メモ

「兵士帰国を」 高まる声


 【ワシントン=浜谷浩司】イラク開戦の一年近くも前に、ブッシュ米大統領とブレア英首相がイラクの体制転換を目的に侵略に合意していたと、英紙サンデー・タイムズ五月一日付が報じてから一カ月半。同紙が暴露した「ダウニング街(英首相官邸)メモ」は米政権を揺さぶっています。

「公聴会」の証言

 イラク戦争の真実とブッシュ政権の責任を明らかにしようと、米下院司法委員会の民主党議員らが十六日、「ダウニング街議事録公聴会」を議会内で開きました。

 与党・共和党の反対で、公式の公聴会ではない「フォーラム」となったものの、四人が証言。委員長役を務めたコニヤーズ筆頭委員は「なぜこうなったかを明らかにし、二度と起こさないよう力を尽くそう」と呼び掛けました。

 かつてイラク臨時代理大使を務めたジョー・ウィルソン氏は証言で、「怪しげな口実で軍を派遣したことがますます明らかになっている」と指摘しました。

 昨年四月、二十四歳の息子をバグダッドのサドルシティーで亡くしたシンディ・シーハンさんは、イラク侵略は「歴史的な規模のうそ」をもとに行われ、本来なら「息子と何千人もの人々が今なお生きているはずだった」と話しました。

「メモ」の中身は

 「ダウニング街メモ」の冒頭には「秘密かつ厳格に個人目的―英国関係者のみ」の文字。二〇〇二年七月二十三日に英首相官邸で開かれた会議の内容を、対外政策担当の補佐官が記しています。会議にはブレア首相をはじめストロー外相、フーン国防相、ゴールドスミス法務長官、「C」(情報機関=MI6=のディアラブ長官)らが出席しました。

 C 「軍事行動はもはや避けがたい。ブッシュはサダム(フセイン・イラク元大統領)を軍事行動によって排除したがっており、それはテロと大量破壊兵器の問題で正当化されている。しかし、政策にそって情報や事実が仕組まれている」

 外相 「ブッシュが軍事行動を決意していることは明らかだ。しかし論拠は薄い。サダムは近隣諸国を脅かしておらず、大量破壊兵器の能力もリビアや北朝鮮、イランに劣る」

 法務長官 「体制転換は軍事行動の法的理由にならない。理由となるのは自衛、人道的介入、国連安保理による許可の三つだ」

 ブレア首相が〇二年四月に開かれたブッシュ大統領との会談で「(イラクの)体制転換のための軍事行動を英国は支持する」と述べたことも、会議のために作成された文書に記されていました。

 「ダウニング街メモ」が本物であることは英政府が確認しています。

 これまでも、戦争遂行に有利なように情報がゆがめられたとの疑惑はありましたが、それを証明する材料が政府に握られている中で、政権の責任追及は困難でした。「政策にそって情報や事実が仕組まれている」とした「ダウニング街メモ」は、そこを埋めました。

終わりの始まり

 ブッシュ大統領とブレア首相は七日、ホワイトハウスで会談後、記者会見に臨みました。

 「政策にそって情報や事実が仕組まれている」のは実際に起きたことか―。記者団の質問に、ブレア首相もブッシュ大統領も正面からの答えを避け、話をそらしたとの印象を与えました。

 サンデー・タイムズ紙が最初に報道した四日後。コニヤーズ議員らは「メモ」の内容を確認するよう迫った公開書簡をブッシュ大統領に送りました。百二十人を超える議員が署名した書簡に、今なお回答はありません。

 コニヤーズ議員らは十六日の「公聴会」終了後、ホワイトハウスを訪ね、政権の責任を追及する五十四万人以上の署名を提出しました。

 議員らは「兵士を帰国させろ」と声を合わせる市民らの集まりに合流。シェイラ・ジャクソン・リー下院議員は、南部での黒人の権利獲得の歴史を思い起こしながら、「真実が語られなかった歴史」の「終わりが始まった」と話しました。


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